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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第9章 眠れないお姫様



「おーい、お眠りプリンセス!日が昇って鳥も歌ってる!」

「このままじゃ朝食が全てロンの胃袋行きだぞ!」


チユは双子に軽く身体を揺すられて、ようやく目を覚ました。目の前には、まるで鏡を見ているかのようにそっくりな赤毛の顔が2つ。

寝起きの朦朧とした目では、その2つの顔はまるで揺れる炎のように重なり合い、一体どちらがフレッドでどちらがジョージなのか、さらに区別がつかなくなっていた。


チユは少し寝ぼけた様子で伸びをして、まだ眠気を引きずっている。


「おはよう、2人共」チユは柔らかな微笑みを浮かべながら、髪をかき上げた。少し恥ずかしそうに、昨夜の記憶が断片的に蘇ってくる。


「もう1分遅かったら、古代魔法の『王子様のキスで目覚めるお姫様の呪い』を試してたところだよ」
ジョージはうんうんと頷く。

「効果は絶大!当社比200%の覚醒効果!たった一回のキスでお目覚め、なんて素晴らしいサービスだろう?」フレッドがチユの頬に顔を近づけた。


チユは素早く手のひらでフレッドの顔を軽く押しのけた「もう起きたから、その魔法は必要ありません」


「なんて冷たい仕打ちだ、ジョージ!我々の純粋な愛情表現を拒絶されたぞ!」
フレッドは劇的に胸に手を当て、倒れ込むふりをした。

「まったくだ、フレッド!これが愛の代償か...」ジョージも同様に演技をし、天井に向かって両手を広げた。「もう少し素直になってもいいんだぜ、プリンセス」


「そのお姫様扱い、そろそろやめてよ!」
悪い気はしなかったが、やはり“お姫様”という扱いには少し照れくさい。


「やめられるわけないだろ!」フレッドは両手を腰に当て、自信たっぷりに言い放った。

「なにせ、君はホグワーツで一番美しい星のように輝いているんだから」ジョージはまるで詩人のように右手を胸に当て、左手を優雅に空に向けた。

「そして我々は、その姫を守る騎士さ!」双子は同時に膝をつき、頭を下げた。


チユは2人のこの上ない馬鹿げた行動に、思わず笑い声を漏らした。何を言っても止まらないのだろうと悟り、ベッドから立ち上がった。

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