第9章 眠れないお姫様
それにしても、こんな顔を見せるジョージは、フレッドですら驚くほどだ。産まれてからずっと一緒にいるのに、彼のこんな表情は初めて見る。
「おや?」フレッドが急に身を起こし、双子の片方を興味深そうに観察し始めた。
「これはどういうことだ、ジョージ・ウィーズリー?まさかお前...」
「うるさいな」
ジョージの頬に赤みが差し、フレッドに向かって枕を投げた。
「お前だって同じだろ?」
「まあな」フレッドは意外と素直に認め、少し照れたように髪をかき上げた。
「『選べ!どっちのウィーズリーショー』でもやるか?」
ジョージが提案すると、2人は顔を見合わせて静かに笑った。
「まずは扉のネームプレートにチユの名前を追加するか」フレッドがいたずらっぽく目を輝かせた。
「"チユ・ウィーズリー"ってな。どっちのウィーズリーかは後で決めるとして」
「それは良い考えだ...でも、彼女が選ぶとしたら、当然俺の方だね」ジョージは自信たっぷりに胸を張った。
「夢でも見てろよ、弟よ」フレッドは挑戦的に眉を上げた。
2人はしばらく小声で冗談を言い合いながら、チユを起こさないように静かにしていたが、その視線には今までにない優しさと、心の奥底にある特別な感情が混ざり合っていた。
いつもの悪戯心と共に、初めて芽生えた恋心を、双子はそれぞれの方法で大切に育んでいた。