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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第9章 眠れないお姫様


それから、物語は次第に進み『3人兄弟の物語』に移った。

フレッドとジョージの語りは、最初の軽快な調子から一転し、普段のイタズラ好きな2人の姿とはまるで違っていた。
その声は、どこか穏やかで、落ち着いていて、まるで魔法のようにチユを包み込んでいった。心地よい安心感が広がる声だった。


「実はこれ、パーシーが夜泣きしたときに1番効いたんだ」フレッドが小声で囁いた。

「ビルとチャーリーもな」ジョージも静かに付け加えた。まるで自分たちがその時に読み聞かせたかのような口ぶりだ。


ひとつのベッドの中で3人が一緒に眠るのは、少し窮屈ではあったが、その窮屈さが逆に心地よかった。
フレッドの隣、ジョージの隣、温かい2人の存在がそばにある安心感――チユはそのぬくもりに包まれながら、穏やかな眠りに身を任せていった。


もし自分に兄がいたら、こんな感じだったのだろうか…ふと、チユはそんな思いを抱きながら、ゆっくりと目を閉じた。



「おやすみ、お姫様。」フレッドとジョージの声が、波のように優しく耳に届く。


物語が終わり、2人は静かにチユの髪を撫でる。その手のひらの温もりが心地よく、チユは深い眠りに落ちていった。


「よし、ウィーズリー特製『悪夢撃退大作戦』は大成功だな」フレッドが小声で言うと、ジョージは親指を立てて静かに頷いた。

「明日は彼女をゴーストにしないためのステップ2『朝食大盛りサプライズ』だ」ジョージがニヤリと笑い、フレッドも含み笑いを漏らした。


2人の間にひとしきりの静寂が広がった。やがて、その静けさが夜の闇に溶け込み、3人の心は一つになった。


その晩、チユはホグワーツに来てから初めて、悪夢にうなされることなく、深い眠りに包まれ、朝までぐっすりと眠ることができたのだった。



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