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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第9章 眠れないお姫様



双子は満足げな顔で、まるで大掛かりな悪戯を成功させた後のように、誇らしげにチユに向き直った。


「実はな、我々が今夜用意した秘密兵器はこれだ!『吟遊詩人ビードルの物語』!」フレッドは大げさに本を差し出した。

「おっと、図書館の禁書区画から拝借したわけじゃないぞ?」
ジョージがわざとらしく咳払いをしながら付け加えた。

「次、マダム・ピンスに見つかったら、俺たちの皮で手袋を作るって脅されてるからな」

「そうそう、俺達これママによく読み聞かせてもらってたんだよ」フレッドは懐かしそうに語りながら、口元に笑みを浮かべた。「チャーリーが火吹き竜を捕まえたり、パーシーが大事な規則集を紛失した時でも、これを読んでもらうとすぐに眠れたもんさ」


「夜の冒険って、まさか寝る前のお話の事?」チユは少し驚いたように問いかけると、フレッドがニヤリと笑った。

「ああ、そうだとも。でも、これはただのお話じゃないぞ!ウィーズリー特製、超豪華実演付きだ!」


「バビティ兎ちゃんとペチャクチャ切り株」フレッドが声を発すと、ジョージは顔をしかめた。


「ちょっと待て、今の台詞…うまく言えなかったんじゃないか?」

「いいや、問題ない、問題ない。お前の舌も寝かせとけ」フレッドが肩をすくめる。


そして2人は本に集中し、物語が進み始める。ペテン師が大魔法使いを自称して、魔力を得ようとするマグルの国王を欺く――しかし、そのペテン師の嘘が暴かれる瞬間、物語は急展開を迎える。


「そして、国王は言った。『あなた、何でもできるんだろう?』」

フレッドとジョージは、まるで劇場の演技を見せるかのように声を変え、物語の登場人物を一生懸命演じながら読み進めた。


「『もちろん! わしは何でもできる!』」ジョージが、ペテン師になりきって低い声で言い、フレッドが国王役を熱演しながら続けた。


チユはベッドの上で、この予想外の出し物に思わず声を上げて笑った。双子の馬鹿げた演技と即興の掛け合いは、普通の読み聞かせとはまったく違う、まるで専用の喜劇ショーのようだった。


「ねえ、これって本当に本の内容通りなの?」チユは疑わしげに尋ねた。


「「もちろん!」」2人は声を揃え、互いに謀略めいた視線を交わして笑った。「ほんの少しだけ…ウィーズリー風アレンジを加えただけさ!」​​​​​​​​​​​​​​​​
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