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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第1章 空からの知らせ



大人にこんなにも優しく接してもらえることは、チユにとって初めての経験だった。

この気持ちを言葉にする術を知らず、ただ黙り込んでしまう。
その様子を見たリーマスは、慌てた様子でポケットからチョコレートを取り出した。


「本当にすまない、軽率だった」リーマスは申し訳なさそうに言った。

「これを食べてみて。きっと心が落ち着くから。あ、いや、変なものは入っていないからね!」


その言葉に、チユは思わず笑みがこぼれた。
目の前の大人の男が、まるで子供のように慌てふためく姿が可笑しくて仕方がなかった。


「ごめんなさい、違うんです」チユは小さな声で説明を始めた。

「優しくして貰って本当に嬉しかったの。ただ...今までそんな経験がなくて、少し怖くなって………」


その告白を聞いたリーマスの表情が、深い悲しみに曇るのが見えた。
チユは慌てて何か言おうとしたが、リーマスが先に静かに話し始めた。


「大丈夫だ」彼の声は柔らかく、しかし確かな強さを持っていた。


「これからは君に酷い目にあわせる者は誰もいない。ダンブルドアがそんなことは許さないし、私もだ。きっとダンブルドアが君を私に託したのも、私たちが何処か似ているからだ」


「私とリーマスが...似ている?」チユは不思議そうに首を傾げた。

「ああ、それはまた改めて話そう」リーマスは微かに苦笑を浮かべた。
「とにかく、君にとってホグワーツは良い経験になるはずだ」


「そうだと良いけど...」


「今日は随分と疲れただろう?」リーマスは優しく微笑んだ。


「さあ、こっちの部屋で休むといい」


寝室に案内されたチユは、清潔な白いシーツの敷かれたベッドを目にした。半月もの間、墓地で眠っていた身には、まるで天国のような光景だった。


「ゆっくり休んでおくれ」リーマスは戸口で言った。「明日は教科書を買いに行こう」


「おやすみなさい」

「おやすみ、チユ」


柔らかなベッドに身を横たえると、疲れが一気に押し寄せてきた。チユは穏やかな安心感に包まれながら、すぐに深い眠りに落ちていった。

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