• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第9章 眠れないお姫様


しばらく談話室のソファーでくつろいでいると、ふいに丸い穴からそっくりな顔が覗いた。

「おっと、これは申し訳ない!王女様をお待たせして、我々は不届き者だな、ジョージ」
「まったくだ、フレッド。獅子寮のプリンセス、我らの不作法をお許しください!」

2人は大げさに床に膝をつき、額に手を当てて深々とお辞儀をした。


「やっぱり、思った通り抜け道は俺達が前に見つけたやつだったよ」

「そうそう、だから長々花火を火蟹に食わせて遊んでたんだけどさ、うっかりフィルチに見つかっちまったんだよな」2人は顔を見合わせ、口元に笑みを浮かべる。

「それからフィルチの履いてるスラックスを長々花火で燃やしちまって――」とフレッドが言いかけるが、チユが先に言った。


「それで罰則を受けてたんだね」


「「まったくそのとおり!」」
双子はまるで決まり文句のように声を揃えた。


「それで、私は何をしたらいいの?」


もしや自分が長々花火を食べさせられる羽目になるのでは?と少し不安になりながらも、口を挟む。


「とりあえず、パジャマに着替えておいでよ!」

「えっ、パジャマ?」チユは目を丸くし、双子を交互に見つめる。「…な、なんで?」


「夜の冒険には、パジャマが正装なんだよ!校則違反の正装さ!」
フレッドは肩をすくめながら、まるで当たり前のことのように言った。

「それに、もし捕まっても『夢遊病なんです』って言い訳ができる。天才的だろ?」
ジョージは片手を胸に当て、もう片方の手をチユへ差し出した。


チユはもうどうしていいのか分からなくなりつつ「まあ、いいか…」と納得し、部屋へと戻る。

パジャマに着替え、その上にガウンを引っ掛けると再び談話室へと降りた。
ガウンの裾を気にしながら、少し恥ずかしそうに登場するチユに、双子はにっこりと笑いながら口笛を吹き、片手を額に当てて敬礼した。

「おぉ!見よ、ジョージ!我らがパジャマ姿の冒険家殿下の華麗なるご登場だ!」フレッドが叫ぶと、ジョージはポケットから小さな紙吹雪の入った袋を取り出し、チユの頭上にばらまいた。

「さぁさぁ、お嬢様!今宵の冒険が始まるぞ!」
2人は同時にチユの両腕を取り、まるでエスコートするように前へ引っ張る。


チユはその余りにも大げさな演技に呆れながらも、心の中で好奇心と不安を抱えつつ、彼らの後を追うことになった。
/ 214ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp