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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第8章 翼を得た少女



医務室に着くと、ホグワーツの校医であるマダム・ポンフリーがすぐに対応してくれ、マダム・フーチが事の経緯を説明した。ジョージの腕を見て、ポンフリー先生は安堵の微笑みを浮かべた。


「少々痛めているみたいですが、直ぐに治りますよ。今日は安静にしてて下さいね」


その診断を聞いて、チユはほっと胸を撫で下ろした。


「ほらね、心配するようなことじゃなかっただろ」
ジョージは軽く笑いながら言った。

「それとも、そんなに貧弱に見えるかね?」


「そ、そういう訳じゃ…」


「冗談だよ」ジョージは笑った。「それにしても、君のブルームは相当暴れん坊だったね。フレッドと俺が1年生の時の箒よりもひどいかも」

「今後は、箒を掃除のためだけに使うことにするよ」
チユは肩をすくめた。


「まさかだったよ、ロンの初飛行訓練をからかいに授業を抜け出して来たんだけど、こんな展開になるなんてな。こりゃ相棒に自慢できるぜ」


「本当にありがとう。私、どうお礼をしたら良いのか…」


心から感謝していた。もしジョージがいなければ、大怪我をするどころか、最悪命を落としていたかもしれない。


「じゃあ、今日1日、俺の言うことを聞いてくれよ。具体的には、夕食時にスリザリンのテーブルに向かってこの小さな花火を投げるとか」
ポケットから怪しげな小さな玉を取り出して見せる。

突然の提案に、チユは目を丸くした。
ジョージは腕をわざとらしく揺らしながら、いたずらっぽい笑みを浮かべる。


「あー、やっぱり腕が痛むなぁ」


チユは思わずため息をつき、しぶしぶと頷いた。
「わかった、でも怒られるようなことはダメだよ?」


「そりゃそうさ。僕たちは決して先生に怒られるようなことはしないよ…ただ見つかるだけさ」

ジョージは満面の笑みで言い、マダム・ポンフリーの視線が離れた隙に、さらに2つの奇妙な色の飴玉をチユの手のひらに滑り込ませた。


「これ、お姫様への特別サービス。赤いのは舌が伸びる、青いのは耳から煙が出るよ。どっちも試さなくていいけどね」

チユは少し驚きながらも、思わず笑ってしまった。
先程感じた王子様のような印象は、やはり間違っていたようだ。
それでも、彼の腕の中で感じた安心感は、確かに本物だった。その瞬間のジョージの機転と勇気に、ひそかに感謝していた。​​​​​​​​​​​​​​​​
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