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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第8章 翼を得た少女



時が止まったかのような一瞬だった。


チユは目を固く閉じ、迫り来る地面への衝突に身を縮ませた。しかし予想していた衝撃は訪れず、代わりに誰かの温もりを感じる。
恐る恐る目を開けると、そこにはウィーズリー家の双子の1人が、しっかりと自分を受け止めていた。


「おっと、フレッドに言うのを忘れていたよ。今日は空から可愛い女の子が降ってくる予報だって」ジョージは茶目っ気たっぷりの笑顔で言った。


「じ、ジョージ!?」


「正解だ、次からはフレッドと間違えないでくれよ」
ウインクしながらチユを軽々と地面に降ろす。


チユを優しく抱きかかえたその姿は、まるで王子の様に頼もしかったが、すぐにいつものふざけた態度に戻っていた。


「ありがとう…!腕は大丈夫?」


あの高さから落ちてきた衝撃は相当なものだったはずだ。
チユが心配そうにジョージの腕を見つめると、彼は肩をすくめて、軽く笑った。


「チユに怪我が無くて本当に良かった。心臓が止まりそうだったよ」


ジョージは一瞬真剣な表情を浮かべたが、すぐに陽気な笑顔に戻り、軽くチユの頭をくしゃっと撫でた。


「本当に、危なっかしいお姫様だ」


その時、マダム・フーチが青ざめた顔で駆け寄ってきた。


「2人とも! 大丈夫ですか!? すぐに医務室へ行きましょう!」


慌てたマダム・フーチは、残りの生徒たちに向かって「勝手に箒に触れたら退学処分ですよ!」と厳しく言い残すと、チユとジョージを医務室へと急がせた。


「医務室?冗談でしょ?この程度で。フレッドと僕は先週、もっとひどい目に遭ったんですよ。実は新しい商品の試作品が——」


ジョージは明らかに医務室行きを回避しようと話題を逸らし始めたが、チユは上目遣いで彼を見上げた。


「お願い、お願いだから…」
その懇願するような瞳に、ジョージは思わず言葉を飲み込んだ。

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