第7章 打ちひしがれた願い
「くつろいでくれや」
ハグリッドは大きなティーポットを手に取ると、お茶を注ぎ、ロックケーキを皿に乗せてテーブルに並べた。
「彼はロンだよ」とハリーが紹介する。
「ああ、ウィーズリー家の子かい。お前さんの双子の兄貴たちを森から追っ払うのに、俺は人生の半分を費やしているようなもんだ」
ロンのそばかすをチラリと見ながら、ハグリッドは続けた。
3人はその言葉に苦笑いを浮かべた。
「そしてこっちの彼女が――」
「知っちょる、お前さんがチユ・クローバーだな?」
ハリーの紹介をさえぎる形で、ハグリッドが言った。
有名人であるハリーやウィーズリー家のロンならまだしも、自分の名前を知られている事にチユは驚いた。
「ダンブルドア先生から話は聞いとる」ハグリッドは軽く笑いながら続けた。
「ああ、そういうことか」とチユは納得し、ロックケーキを口に運んだ。
ところが、歯が折れそうになるほど固かった。
3人は美味しそうに見せかけて食べるものの、チユの口元は明らかに引き攣っていた。
「これは本当に食べ物なのだろうか…?」と心の中で呟く。
その後、ハリーは今日の授業について話し始めた。
挫折感に苛まれていたチユにとっては授業の話をするのはあまり気持ちのいい物ではなかった。
なので、上の空だったチユはテーブルの上に置かれていた1枚の紙切れをふと手に取った。
『日刊予言者新聞』の切り抜きのようだった。
『グリンゴッツ侵入される』
7月31日に起きたグリンゴッツ侵入事件については、闇の魔法使いの仕業とされているが捜査は依然として続いている。
グリンゴッツの子鬼たちは、今日になって、「何も盗られたものはなかった」と主張した。