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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第7章 打ちひしがれた願い




「今日お茶に来ないかってハグリッドが、皆も一緒に行かない?」
ハリーが、嬉しそうに手紙を胸に抱えながら提案した。どうやら、ハグリッドから手紙が届いたらしい。顔に満面の笑みを浮かべている。

ロンとチユはその提案に賛同した。
これから、あの嫌なスリザリンの生徒と授業を受けなければならない。
せめてハグリッドとのお茶という楽しみができて、少しだけ心が軽くなった気がした。

3人は大鍋を抱え、地下牢にある教室へと向かった。
地下の教室は、冷え切っていて、壁にずらりと並んだガラス瓶の中にはアルコール漬けの動物たちが、プカプカと漂っている。
気味の悪い光景に、ここからすぐにでも立ち去りたいと思った。


しかし、チユにはリーマスのために『脱狼薬』を調合したいという強い夢があった。
狼人間の症状を軽減し、変身しても自我を保つことができる画期的な魔法薬だ。その薬を作ることができたなら、リーマスの苦しみを少しでも軽減できるかもしれない。

調合の難しさ故に非常に高価で、資金的余裕のないチユとリーマスには手の届かない品だ。
ならば自分で調合できるようになるしかないと決意したのだ。


その為、ホグワーツに入学する前から、毎晩遅くまで魔法薬学の教科書や本を読み込んでいたので、呪文学ほどではないが、魔法薬学には少しだけ自信を持っていた。

「見て見て、ハリー・ポッターだ。あ、隣はチユ・クロバだよ。」
スリザリンの生徒たちがこそこそと話しながら、こちらを指さしている。ハリーとチユは、その囁き声にうんざりして、早く授業が始まらないかと思いながら、聞こえないふりをした。


「あ、見て見て、あそこ」
「どこ?」
「ほら、あっちの隅っこ」


そこには、あのゼロ・グレインが座っていた。
見れば見るほど、その顔は完璧に美しく、どこか不思議な魅力を放っている。彼は俯き、長身を小さく丸めるようにして、教室の隅に静かに座っていた。周囲とまるで隔絶されたようなその姿は、どこか孤独を感じさせた。


「なんであいつ、グリフィンドールなんかに組み分けされたんだろう」
「グレインっていえば、スリザリンの歴史ある名家の一族なのに」

その話題は、すぐにチユとハリーのことをかき消してしまった。グレインに関する噂話で、教室の中は一気に盛り上がっているようだった。
彼には申し訳ないが、正直、助かったと感じた。


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