第7章 打ちひしがれた願い
初日の授業を無事に終え、夕食の時間がやってきた。3人は大広間に向かって歩き始めたが、途中でチユは「お手洗いに行ってくるから、先に行ってて」と言って、1人で女子トイレに向かうことにした。しかし、廊下を歩いているうちに、ふと迷ってしまった。
一度引き返そうとしたが、ちょうど角を曲がった先から、誰かが話している声が聞こえてきて、チユは無意識にその声に耳を傾ける。
「聞いたか?クローバーっておっかないらしいぞ」
「あの、マルフォイやグラップにゴイルを杖も使わずに吹き飛ばしたらしいぜ」
その会話を聞いて、チユは思わず立ち止まった。
誰かが、あの列車の中での出来事を見ていたのだろう。
しかし、その噂があまりにも誇張されていることに気づき、思わず苦笑いが漏れる。
「吹き飛ばしはしたけど、杖は使ってるのに…」と心の中でつぶやく。
彼らの言い方ではまるで自分がとんでもない怪力の持ち主みたいに聞こえる。
そして、次に耳にした言葉がチユを深く傷つけた。
「なんだか気味が悪いよ。人間じゃないみたいで」
「あの瞳が特に不気味だ、まるで『悪魔』だな」
その言葉が耳に入った瞬間、チユは背筋が凍る思いがした。
『悪魔』――まただ。孤児院の時のように、またもやそんな目で見られるのだろうか。
その考えが頭をよぎり、チユは顔色が急に青ざめていくのを感じた。
その瞬間、心の中で一瞬の希望が完全に消え失せたような気がした。
「ごめんなさい、リーマス…やっぱり私には楽しい学校生活なんて無理みたい――」心の中で謝りながら、その思いがどんどん大きくなっていった。
自室に向かう足取りは速かった。
誰かに見られたくない、話しかけられたくない。
ただ1人になりたかった。
ドアを開け、部屋に飛び込むように入ると、バロンがいつものようにチユをじっと睨みつけていた。
普段なら気にしないその視線も、今はどこか冷たく感じ、他の生徒たちから向けられた冷たい視線と重なり、チユは溢れそうになる涙を必死にこらえた。