第7章 打ちひしがれた願い
こうして新たな学校生活が始まった。
慣れない場所、ひとりで過ごす不安からか、チユは夜明け前に目を覚ました。
まだ外は暗く、冷たい空気が部屋を包んでいる。目を閉じてもう一度眠ろうとしたが、何度目をつむっても心は落ち着かず、眠りに落ちることはできなかった。仕方なく、ベッドから出て、夜が明けるのを待つことにした。
鏡を見て身だしなみを整えると、寝不足のせいで顔色はすっかり青白く、元々儚げな印象の顔立ちがさらに無機質に映る。目の下に浮かぶほんのりとしたクマさえ、気になるほどだった。
床に散らばったままの昨日の制服を手にし、着替える。グリフィンドールの新しいローブを羽織ると、荷物が昨日のうちに部屋に運ばれていたのを思い出し、さっそく荷解きを始めた。
部屋の隅にある鳥籠の中で、バロンがふくれっ面で彼女を睨みつけている。チユは少し困った顔でその様子を見た。
「わかってるよ、すぐに外に出してあげるから、そんなに怒らないで」
鳥籠の扉を開けると、バロンはチユに寄ってくることなく、スーッと高窓の淵に止まった。リーマスの家ではいつも外に自由に出してあげていたので、外の景色が恋しいのだろう。
そんなバロンの姿を見て、チユはいたたまれなくなった。
「ごめんね」と小さな声で呟き、目を逸らしながら荷解きを続けた。
荷物と言っても、チユのトランクは必要最低限のものしか入っていない。
教科書、数着の衣類、それにいくつかの個人的な小物だけだったので、荷解きはあっという間に終わった。
「さて、どうしようかな…」と、チユは荷解きが終わった後、ぽつりと呟いた。
まだ朝食までには時間がある。時計を見ても、時間がゆっくりと流れているように感じられた。
教科書を取り出してみても、どれも興味が湧かなかった。
唯一の得意分野ある呪文学に関しては、1年生が習うような呪文はどれもチユにとっては簡単すぎて、わざわざページをめくる気にもならなかった。
とりあえず、談話室に行ってみよう。
ロンとハリーがもしかしたら、緊張して早く目覚めているかもしれないと、期待を込めて階段を降り始めた。