第6章 黄金のグリフィン
「1人部屋なんて特例よ、しかも今年は男子にも1人部屋が与えられた子がいるらしいわ。」
「男子にも?」
「ええ、ゼロ・グレインって子よ」
ゼロ・グレイン――…彼もまた、自分と同じように何か隠しているのだろうか?
広間で彼と目が合った瞬間、一瞬で心臓が高鳴るのを感じた。
それは、単に彼の容姿があまりに美しかったからだと思っていた。
けれど、こうして彼と自分の間に何か共通点があると知り、まるで運命のような不思議な縁を感じずにはいられなかった。
部屋に入ると、目の前には大きな高窓が広がり、校庭が見渡せた。
赤いベルベットのカーテンが優雅に掛かり、四本柱の天蓋付きベッドが置かれていた。
まるで夢の中に迷い込んだような、目を見張るほど美しい部屋だったけれど、その美しさに感動する余裕もなく、チユはただ疲れ切っていた。
慣れない環境、続く緊張、それらが積もりに積もって、足元がふらつき、何も考えずに制服を脱ぎ捨てると、そのままベッドに倒れ込んだ。
目を閉じた瞬間、深い眠りに引き込まれる。
そして不思議な夢をみた。
チユは夢の中で、薄暗い場所に立っていた。
遠くから響く微かな足音が聞こえる。その足音が近づくにつれて、彼女の胸が高鳴った。
やがて、その人物が現れた。長い髪が風に揺れ、影の中にぼんやりと浮かぶその姿には見覚えがあるような気がした。
彼が一歩一歩近づいてきて、温かな空気がチユを包み込む。目を合わせると、彼の瞳の奥に何か深いものを感じた。それは、まるでチユを守ろうとしているような、安心感だった。
彼は何も言わず、ただ微笑んで手を差し伸べてきた。
その手が触れると、ふわりとした温かさに包まれ、どこか懐かしいような感覚が広がる。
曖昧な姿であったが、チユはその人物がゼロ・グレインではないかと、ふと思った。
いや、むしろそれを願っていたのかもしれない。
もし彼がその人物なら、まるで物語のようにロマンチックだから。