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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第1章 空からの知らせ



震える指で黄ばんだ封筒の封を開く。
中から取り出した羊皮紙には、深いエメラルドグリーンのインクで美しい文字が躍っていた。

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親愛なるチユ・クローバー殿

このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。
教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。
新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

副校長 ミネルバ・マクゴナガル
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「ホグワーツ魔法魔術学校...」


チユは小さく呟いた。魔法界で暮らす者なら誰もが知る、憧れの学び舎。孤児院でも、何度となく耳にしていた。

手紙を何度も何度も読み返す。目の前が少し霞んで、文字がぼやける。涙が溢れていることに気付いた。


宛名には間違いなくチユの名が書かれている。
チユは生まれて初めて、自分宛の手紙を手にしていた。


しかし、喜びもつかの間、現実が重くのしかかってきた。


教科書を買うお金も、制服を揃える手段も、そして何より、この手紙の返事を送る方法さえ持っていない。
目の前でじっと待つ白い梟を見つめながら、チユは心の中で何度も言い聞かせた。


「これだけで十分だ」


自分のような存在に、手紙が送られてきただけでも奇跡のようなこと。

孤児院では『悪魔』と呼ばれ、制御できない魔力のせいで追い出された自分に、こんな素晴らしい機会が与えられるはずがない。


それでも、手紙を胸に抱きしめる手に力が入る。


白い梟は、まるでチユの葛藤を理解するかのように、静かに彼女を見つめ続けていた。


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