第1章 空からの知らせ
翌日、また夜が明けきる前に目覚める。
枕代わりにしていた本を手に取り、挟まれていたホグワーツからの手紙がまだそこにあることを確認する。
昨日の出来事が夢ではなく、現実だったのだと実感し、少し安堵した。
喉の渇きと空腹感が募るが、それを誤魔化すかのようにいつも通り本を開き、杖を振るった。
日が落ち初め辺りが茜色に染まる頃には疲れ果て、チユは大きな樫の木にもたれかかっていた。
疲れ切った瞳で遠くを見つめながら、この先の不安が頭をよぎる。
もしこのままこんな生活が続けばいずれ…
「死んじゃうのかな」
その不安が胸の中で膨らみ、つい口から漏れてしまった。
その呟きが風に消えるか、消えないかのうちに背後からパチンという音が響き、チユは思わず振り返った。
するとそこには不思議な事に1人の男が佇んでいた。
その男は、チユの着ているワンピースに引けを取らない程にみすぼらしいローブ、まだかなり若そうだというのに鳶色の髪に白髪が混じり、疲労の色が濃い顔立ちをしている。しかし、その瞳には優しさが宿っていた。
不審な出で立ちにもかかわらず、その温かな眼差しに安心感を覚えたチユは男をまっすぐ見つめ返した。
「君はチユ・クローバーだね?」
チユが黙って頷くと、男はローブの中から一通の手紙を取り出した。
「私はリーマス・ルーピン、ダンブルドアから言われて君に会いに来たんだ。
すまない、君が孤児院を出たと知らなくて迎えに来るのが遅くなってしまった」
差し出された手紙を開くと、昨日届いたものと同じ内容が丁寧な文字で書かれていた。
「同じ物を昨日貰ったよ、ダンブルドアって誰なの?」
「ダンブルドアはホグワーツの校長で、最も偉大な魔法使いだよ。その手紙にも詳しく書いてある」
チユは手紙の上部を見上げ、目に飛び込んできた名前と称号に少し圧倒される。
「ホグワーツ魔法魔術学校
校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、
最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員」
その肩書きに、チユは言葉を失った。何がすごいのか、理解出来なかったが、それでもダンブルドアという人物がとても偉大な存在であることは分かった。分かった様な気がする…
「君には立派な魔女になれる素質がある、だから迎えに来たんだ」