• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第5章 ホグワーツ特急での出会い



その言い方には、明らかに誰かを見下ろすような感覚があり、友人を馬鹿にされた気がしてチユの胸の中でいらだちが広がっていった。

チユは必死に笑顔を作り、ちょっとでも変なことを言ってしまわないように気を付ける。
リーマスの顔が浮かんでくる、彼を悲しませるようなことは絶対にできない。


「私はハーマイオニー・グレンジャー、あなた達は?」



「ロン・ウィーズリーだよ」


「僕はハリー・ポッターだ」


そしてハリーが名乗ると、グレンジャーの顔がぱっと明るくなった。
その反応にチユは少し引いてしまった。まるで自分の知識を披露するチャンスを待っていたかのように、嬉しそうに続けた。


「本当!?私、あなたに関する本をいくつか読んだわ。『近代魔法史』や『黒魔術の栄枯盛衰』、それに『二十世紀の魔法大事件』なんかにもあなたのことが書いてあったわよ」


正直、チユはどんどん疲れてきた。
そして、次にグレンジャーは彼女に目を向ける。


「それじゃあ、そこのあなたは?」


必死に、冷静を保とうとした。心の中で「落ち着け」と自分に言い聞かせながら、笑顔を作る。


「……チユ・クローバー」


言葉が喉元にひっかかりそうになったが、なんとか絞り出した。少しでも気を抜けば、その笑顔を作り続ける自信がなかった。

だが、それでも今はこの場を乗り越えなければならない。もしこんな事で酷い言葉を口にしてしまったとなれば、次にリーマスに会う時にどんな顔をして会えばいいのか分からない。


それを考えると、どうしても一言でも余計なことを言ってはいけないと思った。
今、この場を抜け出したい。けれど、グレンジャーはまるでそんな彼女の気持ちを無視するかのように、話を続けた。

その瞬間、彼女の心の中で一つの思いが強くなった。「早くここを出たい」という気持ちが、ますます強くなり、耐えきれずにチユはコンパートメントの外へと飛び出した。

印象は悪いだろうが、あのままあそこで何か良からぬ事を口にしてしまうよりはよっぽど良いだろう。




/ 214ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp