第5章 ホグワーツ特急での出会い
「でも、よくヒキガエルなんて連れてくる気になったよな……もっとも、僕も人のこと言えないけどさ」
少しふてくされた様子で、ロンは胸のポケットからねずみを取り出した。丸々と太って毛がツヤツヤではないが、満腹顔でぐーぐーと眠っている。
「スキャバーズって言うんだ。コイツ一日中眠ってばっかりでさ。昨日も黄色に変えようとしたんだけど、全然うまくいかなかったんだ」
「すごい、ロンってもう魔法が使えるんだ?」
「いや、たいしたことないけどね。見せてやろうか?」
ハリーが感心したように声を弾ませると、ロンは少し照れながら眠っているスキャバーズを手に取って、荷物からくたびれた杖を取り出した。
「じゃ、行くよ。おひ――」
ちょうどそのとき、コンパートメントの扉が開き、ロンは口に出しかけた呪文を飲み込んだ。
「誰かカエルを見なかった?」
栗毛の気の強そうな女の子が挨拶もなしに入ってきた。
しかも、どこか偉そうなのでチユはすぐにこの子とは気が合わないだろうなと察知した。
「さっきも男の子が来たけど、僕らは見てないよ」
ハリーの言葉が耳に入らない様子で、女の子は振り上げたロンの杖を見つめていた。
「あら、魔法かけるの? なら見せてもらおうかしら」
ロンは少し躊躇いながらも、もう一度スキャバーズに向かって呪文を唱え直した。
「おひ――お日様、雛菊、とろけたバタ~。デブでのろまなネズミを黄色に変えよ」
ロンが唱えた呪文は、チユが今まで見たことも聞いたこともないものだったし、リーマスの家にある本の中にも載っていなかった。もちろん、スキャバーズには何の変化もなく、灰色のままで眠り続けていた。
「その呪文、ちょっと間違ってるんじゃない?」
その言葉にはチユも同意だったけど、女の子が言うとなんだか腹が立った。
「まあ、うまくいかなかったみたいね。でも私、簡単な呪文を試してみたら全部成功したわ。私の家族には魔法使いは一人もいないけど、ホグワーツから手紙をもらった時はすごく驚いたわ。もちろん教科書は全部暗記したけど、それだけじゃ足りないかもしれないけどね……」