第5章 ホグワーツ特急での出会い
その後、ハリーは自分の話をしてくれた。
「ハグリッドが教えてくれるまで、自分が魔法使いだってことも知らなくて。きっと、僕、クラスで1番ビリだよ…」
ハグリッドとはハリーに入学の案内を届け、教材の買い出しを手伝ってくれたという大男らしい。
「マグル出身の子たちも沢山いるんだ、大丈夫だよ、ハリー」
「そうだよ、私だって学ばなきゃいけないこと、沢山あるもの」
チユはリーマスにこの数ヶ月間、勉強だけでなく、生活や一般常識をたくさん教わった。それでも、まだまだ世間知らずな自分に気づくことが多い。
「チユの家族は?兄弟はいるの?」
ハリーがそんな質問を投げかけると、チユは少し言葉を詰まらせた。
「……いいや、私は孤児院出身だから。でも、父だと思ってる人は居るよ」
黙っておこうと思ったが、ハリーの身の上話を聞いているうちに、彼と自分には共通点があると感じて、思わず話してしまった。
孤児院で育ち、ハリーにとってのハグリッドの様にリーマスという男性が迎えに来て、色々なことを教えてくれたという話を。
その話を聞いたハリーは、少し安心したように見えた。自分と似たような境遇の子に出会えたことが、彼にとって何か心強いものになったのだろう。
「驚いたよ、君ってその……どこかのお嬢様だとばっかり思っていたから」
ハリーの予想外の言葉に、チユは笑いを堪えることができなかった。どうやら、自分が世間知らずのお嬢様に見えるらしい。
確かに、チユの見た目に、リーマスから貰ったワンピースを合わせると、名家の出に見えなくもない。
「確かに、初めて見た時は、どこかの貴族みたいだと思ったね」
ロンもハリーに同調し、チユはついに堪えきれずに吹き出してしまった。貴族やお嬢様なんて自分とは真逆の存在に間違われるなんて、思いもよらない話だったから、何ともおかしくて仕方がなかった。
「あははは…やめてよ、2人共!そんな訳ないでしょ!」
チユは、しばらく笑いが止まらなかった。