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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第5章 ホグワーツ特急での出会い



コンパートメントの中は、どこも既に生徒たちで埋まっていた。


チユは不安な気持ちで、足を進めながら「これはホグワーツまで立ちっぱなしかも…」と考えた。

荷物は少ないとはいえ、教科書や教材などが詰まったトランクを細身の体で持つのは思った以上に大変だった。


最後尾のコンパートメントににクシャクシャの黒髪で眼鏡をかけた少年が1人、座っているのを見つける。

出来れば1人でゆっくり座りたかったが、どうやら此処しか空いていないようだ。
だが、これは逆にチャンスかもしれない。この男の子と友達になれたら、きっとリーマスは喜んでくれるだろう。おそらく、優しく頭を撫でて「よくやったね」と言ってくれるはずだ。


覚悟を決めて、チユは精一杯の笑顔を作り、コンパートメントのドアを開けた。


「や、やあ……ここ、座ってもいいかな?」


少し上ずった声で尋ねると、男の子は驚いた表情を浮かべながらも、すぐに優しく返事をしてくれた。


「うん、もちろん!」


チユは少し引きつった笑顔のまま席に座った。
人と関わることがほとんどなかった彼女の話し方は、どうしてもぎこちなく何処か芝居がかっている。
そんなチユに、男の子は驚きながらも、少し微笑んでくれた。


「荷物、手伝おうか?」

「う、うん、ありがとう。」


2人で協力して、荷物を持ち上げ、何とか座席の上に収納することができた。


「助かったよ。えっと…名前は?」


「僕?僕は――――」

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