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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第5章 ホグワーツ特急での出会い



あれから数日が経ち、ついにこの日がやって来た。
今日はついに、ホグワーツへ向かう日だ。


ロンドンのキングズクロス駅に到着すると、周囲はマグルたちで賑わい、駅の広場は人々のざわめきで溢れていた。
チユは緊張の面持ちで、リーマスのカートを押す腕にしっかりとしがみつき、ぴったりとくっついて歩いた。

リーマスは少し困ったように苦笑しながら、「そんなにくっつかれると歩きにくいよ」と言ったが、チユは下を向いて聞こえないふりをし、離れようとはしなかった。


しばらく歩くと、リーマスが立ち止まり、指を指して言った。


「さあ、ここをくぐるんだよ。」


彼が指し示したのは、9番線と10番線の境目にある、少しぼんやりした柱だった。
チユは一瞬何を言っているのか理解できず、顔を顰めたが、リーマスがにっこりと笑った。


「9と4分の3番線には、この間の柱を目指して真っ直ぐ歩けばいいんだ。」

チユはその言葉を信じるのが難しく、思わず目をこすりながら「本当にここをくぐるの?」と疑念が浮かんだ。

それでも、リーマスは軽く笑って、チユの背中をポンと優しく叩いた。


「怖がらずに、しっかり歩けば大丈夫だよ。立ち止まらずに、ぶつかるんじゃないかって思わないようにね。」

「でも、ぶつかるって思わない方がおかしいよ」


「心配しないで。もし怖くなったら、少し走るといいよ。カートを持ってれば、自然にスピードが出るから」


チユはリーマスの言葉を頼りに、深呼吸をしてカートを回し、柵を見つめた。


「これ、ほんとうに大丈夫かな…」と心の中でつぶやきつつ、しっかりとカートを握りしめた。
その柵は、無骨で固そうに見えたけれど、他に道はない。
チユは思い切って、小走りに歩き出した。


だが、他の乗客たちに押されるうちに、次第にカートが思うように動かなくなり、スピードが上がる。
チユはしがみつくようにして、必死にカートを押し続けた。
「ぶつかる…!」と、恐る恐る目を閉じた。


しかし、予想していた衝撃は一向に感じられなかった。

目を開けると、そこには目の前に真っ赤な蒸気機関車「ホグワーツ特急」が停車しており、後ろを振り返ると、鉄のアーチに「9と3/4」の文字が輝いていた。


チユは胸を撫で下ろし、安堵の息をついた。

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