第5章 ホグワーツ特急での出会い
あれから数日が経ち、ついにこの日がやって来た。
今日はついに、ホグワーツへ向かう日だ。
ロンドンのキングズクロス駅に到着すると、周囲はマグルたちで賑わい、駅の広場は人々のざわめきで溢れていた。
チユは緊張の面持ちで、リーマスのカートを押す腕にしっかりとしがみつき、ぴったりとくっついて歩いた。
リーマスは少し困ったように苦笑しながら、「そんなにくっつかれると歩きにくいよ」と言ったが、チユは下を向いて聞こえないふりをし、離れようとはしなかった。
しばらく歩くと、リーマスが立ち止まり、指を指して言った。
「さあ、ここをくぐるんだよ。」
彼が指し示したのは、9番線と10番線の境目にある、少しぼんやりした柱だった。
チユは一瞬何を言っているのか理解できず、顔を顰めたが、リーマスがにっこりと笑った。
「9と4分の3番線には、この間の柱を目指して真っ直ぐ歩けばいいんだ。」
チユはその言葉を信じるのが難しく、思わず目をこすりながら「本当にここをくぐるの?」と疑念が浮かんだ。
それでも、リーマスは軽く笑って、チユの背中をポンと優しく叩いた。
「怖がらずに、しっかり歩けば大丈夫だよ。立ち止まらずに、ぶつかるんじゃないかって思わないようにね。」
「でも、ぶつかるって思わない方がおかしいよ」
「心配しないで。もし怖くなったら、少し走るといいよ。カートを持ってれば、自然にスピードが出るから」
チユはリーマスの言葉を頼りに、深呼吸をしてカートを回し、柵を見つめた。
「これ、ほんとうに大丈夫かな…」と心の中でつぶやきつつ、しっかりとカートを握りしめた。
その柵は、無骨で固そうに見えたけれど、他に道はない。
チユは思い切って、小走りに歩き出した。
だが、他の乗客たちに押されるうちに、次第にカートが思うように動かなくなり、スピードが上がる。
チユはしがみつくようにして、必死にカートを押し続けた。
「ぶつかる…!」と、恐る恐る目を閉じた。
しかし、予想していた衝撃は一向に感じられなかった。
目を開けると、そこには目の前に真っ赤な蒸気機関車「ホグワーツ特急」が停車しており、後ろを振り返ると、鉄のアーチに「9と3/4」の文字が輝いていた。
チユは胸を撫で下ろし、安堵の息をついた。