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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第4章 赤毛の大家族




入学まで、あと1週間を切った。

リーマスは、まるで自分のことのように緊張していた。何度もチユの荷物を確認し、すでにピカピカに整えられたローブに魔法をかけて、さらに輝かせる。


「そろそろ、前髪を整えようか」


チユの前髪は伸びすぎて目にかかっていた。それを見て、リーマスは優しく提案する。


「いいや、このままで良い」


チユは少し顔を背けるようにして、異色の瞳を気にしながら髪を無意識に撫でつけた。


「せっかくの可愛い顔が隠れてしまうよ。それに、君の瞳はとても魅力的で素敵だよ。自信を持って良い」

「そんな訳ない!皆、気持ち悪いって言うもん!適当なこと言わないで!」


チユは感情的に反応した。彼女がこんな風に感情を出せるようになったのは、彼と過ごす日々の中で、少しずつ心を開いてくれたからだった。

お互いが本物の家族になれた証拠だ。


「本当だよ、チユ。君は今まで人に恵まれなかっただけだ。入学までに、少しずつ人と関わることに慣れた方が良いかもしれないね」


そして、リーマスは何かを思いついたように、急に羊皮紙と羽根ペンを手に取り、手紙を書き始めた。

ペンが紙の上を滑る音が、静かな部屋に響いた。その音が、チユには少し不安な気持ちをもたらしたが、リーマスがその手紙を書き終わると、穏やかな笑顔で言った。


「バロンに配達を頼もう。手紙を渡してくれるかい?」


リーマスは、チユに封筒を渡すと、チユは少し戸惑いながらもバロンに封筒を咥えさせた。バロンはさっと飛び立つと、空に消えていった。チユはその後ろ姿を見つめながら、どこかで不安と興奮が入り混じるような気持ちを感じていた。


「初めて手紙を出せたね」


リーマスが、優しくチユの頭を撫でた。その手のひらの温かさに、チユはほんの少しだけ心を落ち着けた。

「うん、無事に届くと良いけど……一体、誰に出したの?」


「私の古い友人だよ。きっと、君の…いや、私達の力になってくれる」


その言葉には深い意味が込められている気がしたが、チユはそのまま黙って頷いた。


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