第3章 魔法のぬくもり
「きっと自分は、友人も恋人も、家族を作ることもできず、孤独に死ぬんだろうってずっと考えていた。でも、違った。友人も、それに大切な家族もできた。」
チユは驚きの表情を浮かべながら、リーマスを見つめた。
彼に家族がいるなんて、まるで想像もしていなかったからだ。
そんなチユを見て、リーマスはクスッと笑うと、握りしめていた手に力を込めた。
「君のことだよ。私にとって、チユは本当の娘のような存在だ」
その言葉を聞いた瞬間、チユの胸は熱くなり、涙が止めどなく溢れてきた。
孤独だった自分の心に、温かな光が差し込んだような気がした。
「あぁ、泣かないでくれ、チユ……お願いだ。確か、ポケットにチョコレートが…」
リーマスが慌ててポケットを探りながら、チユを慰めようとするその姿が、なんだか愛おしくてたまらない。チユは、彼にぎゅっと抱きついた。
「私も、リーマスが、お父さんだったらってずっと考えてた……でも、そんなのはおこがましいって思って…」
涙があふれ続けるチユの身体を、リーマスはおどおどと不器用に抱きしめ返した。
リーマスは、なんだかとても壊れやすい宝物を抱いているような気分だった。
「私は人狼だから、まともな職にもつけないが、チユの幸せのために、全力を尽くすと約束するよ」
リーマスの真剣な眼差しに、チユは心からその言葉を信じることができた。
嘘偽りのない、彼の気持ちがその瞳から伝わってきた。
この瞬間、2人は本物の家族になったのだ。
「私も、リーマスを幸せにしたい」
リーマスは優しく微笑んで、こう言った。
「君と過ごせて、私はもう充分幸せだ。」
その言葉が、チユの心に深く響いた。
彼の言うように、自分と友達になりたいと思ってくれる人が、現れるかもしれない。
優しい人間もいるんだ、リーマスが教えてくれたように、最初から心を閉ざさずに受け入れてみてもいいのかもしれない。
それに、リーマスに心配をかけたくない。彼に笑顔を見せたい。
そのために、チユは心に決めた。友人を作って、もっともっと彼に喜んでもらいたいと。