第3章 魔法のぬくもり
全てが納得できた。
満月が近づくと体調が悪そうだったこと、そして満月の翌日に身体がボロボロになっていたこと。
その理由を尋ねても「仕事で疲れているだけだ」と誤魔化していたが、今なら全てが人狼であることが原因だったのだと理解できた。
チユは驚きと動揺を感じつつも、リーマスにそれを悟られないようにできるだけ平静を装って「そう…」と短く答えた。
「…怖いかい?」
驚きはしたが、絶対に彼を怖いなんて思うわけがない。
言葉の代わりに、チユは彼の大きな手を握り返した。
リーマスの手はわずかに震えており、その微かな震えを通じて、彼の緊張や不安が伝わってきた。
「そんな訳ないよ、リーマスは私の大切な人だもん」
「ありがとう、チユ」
そう、少しだけ微笑んだリーマスは普段の頼りがいのある姿とは違って、何だかとても弱々しく感じた。
チユはただただその手を握りしめることしかできない。
「ダンブルドアは、そんな私をホグワーツに受け入れてくれたんだ。そこで、私はかけがえのない友人達と出会った」
「どんな人なの?」
チユが尋ねると、リーマスは少し躊躇したように見えた。
「アニメーガスは以前に教えたよね?彼らは、アニメーガスになるという危険を冒してまで、私に寄り添ってくれたんだ。皆、優しい心を持っていたよ」
そう話す、リーマスの表情は友人達との楽しい思い出を語るにはあまりにも切なさを帯びていた。
友人達に何か辛い出来事でもあったのだろうか。
辛い思い出を掘り返してしまったかもしれない、と思うと、これ以上、友人たちのことを深く聞くのはよそうと心に決めた。