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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第18章 目覚めの光



試験の結果が張り出された日、チユはその紙を見つめて、しばらく立ち尽くしてしまった。

「――うそ、落ちてない……」


小さく呟いてから、目をぱちくりとさせる。何度見直しても、名前の横にはちゃんと『合格』の文字が並んでいた。

中でも『呪文学』と『変身術』はとても良い成績で、フリットウィック先生の小さな署名とともに『繊細で優れた呪文操作。今後が楽しみです』と書かれた一言コメントまで添えられていた。

チユはそれを何度も読み返しては、胸の奥がふわりとあたたかくなるのを感じた。


――これを見せれば、リーマスが喜んでくれるかもしれない。


そんなことを思いながら、チユは成績表を大切にたたんでポケットにしまった。


「チユ、すごいじゃない!」とハーマイオニーが駆け寄ってきて、嬉しそうに言った。

ハリーもロンも近づいてきて、「僕たちも思ったよりよかった!」と笑っていた。


ネビルもかろうじて合格で『薬草学』が救いだったらしい。
「ゴイルが落第してればよかったのに」とロンはぼやいたが、残念ながら彼もパスしていた。


その後は、あっという間に寮の部屋のタンスが空っぽになり、チユは持ち帰る本の選別にずいぶん時間がかかって、最後にはハーマイオニーに手伝ってもらった。

『休暇中は魔法を使わないように』という紙が全生徒に配られたとき、フレッドがふてくされたように言った。
「毎年思うけどさ、この紙、配るの忘れてくれりゃいいのになあ」


ハグリッドが湖を渡る船に生徒たちを乗せるとき、チユは後ろ髪を引かれるような気持ちで振り返った。見慣れた塔のシルエット、空に広がる白い雲……それらがどれも、名残惜しくてたまらなかった。


(最初に来たときは、あんなに帰りたかったのに)


ホグワーツ特急に乗るとき、みんなが一斉に喋ったり笑ったりしていて、その喧騒が不思議と心地よく感じた。車窓の外には、どんどん緑が増えていく。見慣れない町並みや田園風景に目を向けながら、チユは静かにビーンズの小袋を開けた。


「わっ、これは……石けん味?」

「やっぱり当たり引いたな、チユ!」とロンが笑う。

「ビーンズに当たりなんてあるの?」とハリーは首をかしげた。

ハーマイオニーは呆れたように「あなたたち、最後の最後までふざけてるんだから」と言っていたけど、どこか楽しそうだった。

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