第18章 目覚めの光
「チユーッ!」
「無事で良かった!」
ロンとハーマイオニー、そしてハリーが駆け込んでくる。
その後ろには、いつもながらきびしい表情のマダム・ポンフリーの姿もあった。
「ああもう!静かに!この子はまだ回復したばかりなのです!」
腕を組んだまま、マダム・ポンフリーは鋭い視線を投げる。
「それに、ジョージ・ウィーズリー!何度も追い出したというのに、忍び込むのはやめなさい!」
ジョージは肩をすくめた。
「だって、気になって眠れなかったんだよ。僕、心配性でね」
苦笑を浮かべるジョージに、ロンが吹き出しそうになった。
「もう、無事は確認できたでしょう?良いから出ていきなさい!」
ジョージはベッドの端にしがみつこうとするも、マダム・ポンフリーの容赦ない力で引きずられていく。
チユがくすっと笑ったその瞬間、ジョージは振り返ってウインクしながら叫んだ。
「姫ー!またこっそり来るからなー!夢の中でも会いに行くぜー!」
バタン、と扉が閉まると、部屋に一瞬の静けさが戻った。
そして次の瞬間、ハリー、ロン、ハーマイオニーがぱっと駆け寄ってくる。
「チユ!本当に無事で良かった!」
「大丈夫?まだ痛いところはない?」
「全然目を覚まさないから心配で……」
それぞれが口々に言葉をかける。チユは少しだけ目を丸くしてから、ゆっくりと微笑んだ。
「大丈夫、ありがとう。みんな来てくれて嬉しい」
柔らかい光が、チユの表情を優しく包んだ。温かい気配が、少しずつ胸に満ちていく。
ふと、胸の奥に残っていた引っかかりを口にした。
「それで『例のあの人』は…?」
そう尋ねると、ハリーが小さく息を吸い、静かに答えた。
「僕もよくわからない。でも、ダンブルドア先生は言ってた。あいつは“いなくなった”わけじゃなくて、“どこかへ行ってしまった”だけだって」
「どこか…?」
「生きてるわけじゃないから、殺すこともできないんだって。あれは、生きることにしがみついてるだけの……影みたいなものだから」
あの鏡の前で感じた、死の冷たさと恐怖。クィレルの体から溢れ出していた、異質な何か。
それは“人間”の形をしていたけれど、もう何か別の存在だったように思える。
まだ終わってない――
そう思うと、少し背筋が寒くなる。でも、今はそれを口にはしなかった。