第18章 目覚めの光
窓から差し込むやわらかな光が、まぶたの裏を照らしている。
チユはまどろみの中で目を開けた。
ぼんやりとした視界に、誰かの姿が映る。すぐそばで、手を握っているのは――
「……ジョージ?」
「おや、眠り姫。やっと起きたかい」
いつもの軽い口調。でも、その声にはほっとした息が混じっていた。
チユが動こうとすると、ジョージは焦ったように「無理すんなって」と手を軽く握り直す。
「ロンとハーマイオニー、それから、君の崇拝者たちからの差し入れだよ」
そう言ってジョージが顎で示した先には、医務室の小さなテーブル。
そこには、チョコレート・フロッグに百味ビーンズ、手作りらしいクッキーまで、山のようなお菓子が積まれていた。
チユは目を丸くする。
「どうして?」
つい数日前までは、寮の得点を200点も失ったことで、誰も話しかけてこなかった。
それに――その異色の瞳のせいで、『悪魔』とさえ呼ばれていたのに。
「そりゃ英雄だからな。君のこと、噂で持ちきりだよ。“ポッターと並ぶもうひとりの救世主”ってね」
冗談っぽく言いながらも、ジョージの目は優しかった。
「……ねえ、ジョージ。もしかして……あの、例の――禁じられた部屋のこと、みんな知ってるの?」
その声は不安をにじませていて、チユの指先が少しだけ毛布を握った。
ジョージは、ほんの一瞬だけ表情を引き締めた。
ふざけた調子も抜けて、まっすぐにチユを見つめて答える。
「ああ。もちろん。ダンブルドアが全部話したよ。姫達が何をしたのか……どうやって、クィレルと闘ったのかも」
チユの目が少し揺れる。
何も言えずにいると、ジョージはふいに立ち上がって、ベッドのすぐそばにしゃがみ込んだ。
そして、そっと彼女の手を握り直しながら、真剣な顔で言った。
「……もう、あんなふうに心配させないでくれよ。チユが目を覚まさなかったらって……、俺、本気で――」
そこまで言って、ジョージは言葉を切った。
冗談めかした口調に戻ろうとしたのか、顔をそらして小さく咳払いをする。
「まあ、なんだ……えーと……とにかく!ちゃんと無事でいてくれて、良かった」