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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第18章 目覚めの光



窓から差し込むやわらかな光が、まぶたの裏を照らしている。
チユはまどろみの中で目を開けた。

ぼんやりとした視界に、誰かの姿が映る。すぐそばで、手を握っているのは――


「……ジョージ?」

「おや、眠り姫。やっと起きたかい」


いつもの軽い口調。でも、その声にはほっとした息が混じっていた。
チユが動こうとすると、ジョージは焦ったように「無理すんなって」と手を軽く握り直す。


「ロンとハーマイオニー、それから、君の崇拝者たちからの差し入れだよ」

そう言ってジョージが顎で示した先には、医務室の小さなテーブル。
そこには、チョコレート・フロッグに百味ビーンズ、手作りらしいクッキーまで、山のようなお菓子が積まれていた。

チユは目を丸くする。


「どうして?」


つい数日前までは、寮の得点を200点も失ったことで、誰も話しかけてこなかった。
それに――その異色の瞳のせいで、『悪魔』とさえ呼ばれていたのに。


「そりゃ英雄だからな。君のこと、噂で持ちきりだよ。“ポッターと並ぶもうひとりの救世主”ってね」

冗談っぽく言いながらも、ジョージの目は優しかった。


「……ねえ、ジョージ。もしかして……あの、例の――禁じられた部屋のこと、みんな知ってるの?」


その声は不安をにじませていて、チユの指先が少しだけ毛布を握った。

ジョージは、ほんの一瞬だけ表情を引き締めた。
ふざけた調子も抜けて、まっすぐにチユを見つめて答える。


「ああ。もちろん。ダンブルドアが全部話したよ。姫達が何をしたのか……どうやって、クィレルと闘ったのかも」


チユの目が少し揺れる。
何も言えずにいると、ジョージはふいに立ち上がって、ベッドのすぐそばにしゃがみ込んだ。

そして、そっと彼女の手を握り直しながら、真剣な顔で言った。


「……もう、あんなふうに心配させないでくれよ。チユが目を覚まさなかったらって……、俺、本気で――」


そこまで言って、ジョージは言葉を切った。
冗談めかした口調に戻ろうとしたのか、顔をそらして小さく咳払いをする。


「まあ、なんだ……えーと……とにかく!ちゃんと無事でいてくれて、良かった」


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