第17章 2つの顔を持つ男
「チユ、それ……! 」
ハリーが驚いた声をあげる。
「なんで私のポケットに……?欲しい、って思ったわけじゃない。だけど……守りたいって、思っただけなの」
それだけで、鏡は応えたのだ。
ヴォルデモートの声が、低く呟く。
『惜しい子だ。お前はまだ、壊れやすい。だが、壊れる前に輝く光もあるというのか……』
――その最後の囁きとともに、黒い影は鏡の奥から消えていった。
チユはそっと、杖を胸に抱いた。
「あなたは、私の鏡には映らない。だって、私の願いに、あなたはいないから」
ハリーがそっとチユの隣に立つ。
2人の視線が、鏡の奥で交差した。