第3章 魔法のぬくもり
それから、昼食時になるとチユはサンドイッチを作り始めた。
こうして簡単な食事ならもう1人でも作れるようになったのだ。
サンドイッチをバスケットに詰め、冷たいかぼちゃジュースの瓶を2つ手に取ると、畑仕事をしているリーマスの元へ向かった。
「リーマス!お昼ご飯持ってきたよ!」
「ああ、ありがとう、チユ」
2人は草むらに腰を下ろした。
バスケットの中身を広げると、リーマスは驚いたように言った。
「凄いじゃないか、君はきっと素敵なお嫁さんになれるよ」
「リーマスが教え方が上手いからだよ」
「君は元々沢山の魔法を使えていたし、覚えも早い。チユがホグワーツでどんな風に成長するのか、楽しみだよ」
リーマスの言葉にチユは少し胸が苦しくなった。
もうすぐお別れの時間がやってくる、それが現実味を帯びてきたからだ。
「ねぇ、ホグワーツは楽しかった?」
「ああ、勿論。沢山のことを学べたし、大切な友人もできた」
そう、どこか遠くを見る彼の瞳は寂しそうだった。
「リーマスはどの寮だったの?」
「私はグリフィンドール生だったよ」
「じゃあ、私もグリフィンドールが良いな…」
「そうなれば嬉しいけど、チユならどの寮に入ってもきっと優秀な魔女になれるよ」
彼は続けて、グリフィンドールは勇気、胆力、気力、そして騎士道精神を重んじる寮だと説明してくれた。
その言葉を聞いて、自分にはそれらが何一つ備わっているようには思えなかった。
それでも、同じ寮に入りたいという気持ちは強かった。
「もうすぐ入学だね」
「うん…」
「不安かい?大丈夫だ、チユならすぐに友達ができるさ」
「友達なんていらない。私にはリーマスがいればそれでいいもの」
チユがそう言うと沈黙が流れた。
自分は、魔法が学べればそれで十分だと思っていた。
人と関わることで辛い思いをするなら最初から1人でいいと考えていた。
この瞳のせいで、人と仲良くなんてなれない。
もし、仲良くなれたとしても、この奇妙な羽の存在を知ればみんな離れていくはずだ。
それでもずっと一緒にいてくれたのはリーマスだけだ。
そして、そんな自分をホグワーツに受け入れてくれたダンブルドア。
チユはダンブルドアに会ったことがなかったが、自分の人生において大切な人は、その2人だけだ。
そう考えていた。