第3章 魔法のぬくもり
「うーん、名前かぁ…」
チユは腕を組み、頭を悩ませた。
どんな名前をつければいいのか、思いつかない。
これからずっと一緒にいるのだから、
お洒落で素敵な名前を付けてあげたい。それに、他のホグワーツの生徒たちに馬鹿にされないような名前を…と、少し焦りながら考え込んだ。
「そんなに考え込まなくても、好きなものの名前を付けるとかどうかな?」
リーマスの言葉が、ふっとチユの頭の中に響いた。好きなものの名前…?
「好きな物……好きな物…」
チユは、これまで自分が何を好きだと思ったことがあるだろうと考えた。呪文学…? いや、呪文は得意ではあるけれど、好きというわけではない。
そもそも、そんな名前は嫌だ。
他に好きなもの
リーマスが作るご飯、リーマスがくれる甘いチョコレート、リーマスと一緒に食べたミンスパイ――
チユが思いつく全てのものには、優しく笑うリーマスの姿が浮かんできた。その笑顔を思い浮かべながら、チユはひとつの答えに辿り着いた。
「私が好きなのは、リーマス」
チユは心の中でその答えに満足し、梟に微笑みかけた。
「はは、嬉しいな。私もチユが好きだよ」
リーマスはそう言って、チユの頭を優しく撫でた。
「まぁでも、リーマスって名前を付けたら、ちょっと紛らわしいよね。うーん、何がいいかな?」
チユは梟に語りかけたが、梟はツンとそっぽを向いている。そんな姿を見て、ふとひらめいた。
「バロン」
「男爵かい?」
「うん、なんだか偉そうで、ぴったりかなと思って」
リーマスは笑いながら言った「素敵な名前じゃないか。良かったね、バロン」
リーマスが鳥籠の中に手を差し入れると、バロンはその手に顔をスリスリと擦り付けてきた。まるで彼に甘えるかのように、体をこすりつけるその様子が可愛らしかった。
それからバロンを籠から出してやると、嬉しそうにリーマスの周りをぐるぐると飛び回り、リーマスの腕に止まってはべったりとくっついてきた。
一方、チユはその光景を見て「自分の時とは全然違う」と、少し不満そうに唇を尖らせた。
リーマスはずっと困ったように苦笑いを浮かべていた。