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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第16章 仕掛けられた罠


次の部屋に足を踏み入れると、視界は暗闇に包まれた。けれど一歩踏み込むと、不意に部屋中にまばゆい光があふれ、4人は目を細めながらその異様な光景を見渡した。

巨大なチェス盤が広間を埋め尽くすように広がっており、黒と白の駒が整然と並んでいた。その駒たちは背が高く、どれも黒く輝く石でできている。
反対側には無言の白い駒が構え、どれも人のような姿をしていながら、顔はのっぺらぼうだった。


「わあ…」チユが小さく息を呑んだ。「これ、動くの…?」

「どうしたらいいんだろう?」とハリーがささやく。

「向こうに行くには、チェスをしなくちゃ」ロンが前を見据えた。


白い駒の背後には、もうひとつの頑丈そうな扉があった。


「どうするの?」ハーマイオニーの声には不安が混じっていた。

「多分…僕たち自身が、チェスの駒になるんだと思う」ロンはそう言って黒のナイトに近づいた。すると、石に命が吹き込まれたように、馬がひづめを鳴らし、ナイトがロンをじっと見下ろした。

「僕たち……その、向こうへ行くにはチェスをしなくちゃいけないんですか?」

黒のナイトはゆっくりと無言で頷いた。


「ちょっと考えさせて…」
言葉を選ぶように一拍おいてから、ロンは言った。


「僕たちで駒の役を務めないといけない……で、気を悪くしないでくれよ? 君たち3人はあんまりチェスが得意ではないだろ」

「気を悪くなんかするもんか。何をすればいいのか教えてくれ」ハリーが即座に答えた。

ハーマイオニーもうなずいた。「大丈夫、あなたが指示して」

「そうだよ。ところで、チェスって何?」

チユの問いかけに、ロンは少し固まったが聞こえなかったふりをして話を続けた。

「よし。チユ、君はビショップの代わりになってくれ」

「びしょっぷ……?」

「斜めに動く駒だ。慎重に位置を見て動けば、相手の攻撃を避けながら進める。危険な場面になったら僕が指示するから、心配しなくていいよ」

チユは目を丸くして、でもすぐにコクリと頷いた。


(任されたからには、ちゃんとやらなきゃ…!)


「ハリーは、もうひとつのビショップになって。ハーマイオニー、君はその隣でルークの代わりだ」

「じゃあ、ロンは?」とハリーが聞いた。

ロンは少し息を吸って、真剣な表情になった。

「僕はナイトになる」
その言葉には自信と責任感が滲んでいた。
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