第16章 仕掛けられた罠
ハリーの声と同時に、ロンとハーマイオニーもその銀色の鍵に視線を移した。
3人は風を切って一斉に向かっていくが、狙いが定まったことを察したかのように、銀の鍵は慌てたように羽ばたき、上空へ逃げる。
「待てってば!」ロンが手を伸ばすが、あと一歩届かない。
地上では、チユが杖を握りしめていた。
繰り返し引き寄せの呪文を唱えてみたが、鍵はそれを察知してすばやく旋回し、ことごとくかわされてしまう。
歯がゆさと無力さに唇を噛みしめる。
「ハリー、あなたしか無理よ!」とハーマイオニーが叫ぶ。
「わかってる!」
ハリーは一気に加速した。鍵と同じ高さまで上昇し、周囲の羽音と風のざわめきに神経を研ぎ澄ませる。空気の動きを読むようにして、鍵の進路を見極める。
(いまだ――!)
次の瞬間、ハリーは体を傾け、手をのばした。空中でぴたりと狙いを定めたその手が、鍵の羽をがっちりと掴んだ。
「やった!」
チユが胸を押さえながらほっと息をついた。
頼もしさと安心と、ほんの少しの羨望が入り混じったような瞳で、彼を見上げた。
ハリーが降りてくると、チユがすぐに駆け寄った。
「すごい……本当に捕まえられるなんて!」
「まあ、僕、シーカーだからね」ハリーは照れくさそうに笑った。
「スニッチに比べたら、こんなの羽根つきのオモチャだよな?」
ロンが笑いながら扉の前に立ち、鍵を錠に差し込む。
カチャリと重たい音を立てて鍵が回り、扉がゆっくりと開いていった。
奥からは、また新たな空気の流れ――冷たく張りつめたような気配が漂ってくる。
「行こう」
ハリーが言うと、皆が無言で頷いた。
こうして、4人は次の試練の部屋へと、再び一歩を踏み出した。