第16章 仕掛けられた罠
「次は僕が行くよ」ロンが一歩前に出る。
「うん、先に行って。私とハーマイオニーのクッションになってね」
「ハリーにはそんなこと言わないくせに!」
ロンは顔をしかめながらも、躊躇わずに飛び降りた。下からはまた、鈍い音が響いた。
「さあ、2人ともおいでよ!」ロンの声が闇の下から届く。
ハーマイオニーが笛を吹くのを止めたその瞬間、フラッフィーが大きく吠えた。だが、もう遅い。チユとハーマイオニーはすでに手を取り合い、一緒に飛び込んでいた。
風を切る音が耳を裂き、瞬く間に足元の感覚が消えた。
――ドシンッ!
鈍く、奇妙な音を立てて、チユは何か柔らかいものの上に着地した。見れば、下にはふわふわとした、植物のようなものが一面に広がっていた。
「……なにこれ、なんか、動いてる?……気のせいじゃないよね?」
チユは腰を上げながら辺りを見渡す。どこか不気味で、不自然に柔らかすぎる床に、直感的な嫌な予感がした。
「この植物のおかげで無事だったなんて、俺たちツイてたよな」とロンが言ったそのとき――
「ツイてるですって!?自分たちの格好を見てごらんなさいよ!」
ハーマイオニーの声に、3人が思わず足元を見下ろす。その瞬間だった。
ずるりと音を立てて、足首や腕に冷たいものが巻きついた。ツルだ。いつの間にか足元を覆っていた黒い植物が、蛇のようににゅるにゅるとうごめき始めていた。
チユの細い腕にもツルが巻きつき、彼女は小さく悲鳴を上げた。
「ひっ……!」
必死に振りほどこうとするが、力はどんどん弱まり、杖を持つ手はがっちりと封じられていた。チユの目には涙がにじむ。
彼女にとって、杖は心の支えだった。
それを奪われた今、まるでおしゃぶりを取り上げられた赤子のように、なす術もなくなってしまう。
「……うぅ、ハーマイオニー助けて……お願い……」
チユは半べそをかきながら、震える声で必死に助けを求めた。
ハーマイオニーだけが、辛うじてツルが巻きつく前に身を引いていた。壁際にじりじりと移動しながら、引きつった顔で3人を見ている。
一方、ハリーとロンはすでに太ももや胸元までツルに巻かれ、身動きが取れなくなっていた。