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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第16章 仕掛けられた罠


4人は静かに4階の廊下へとたどり着いた。
目の前の扉はすでに少し開いていて、中からは、かすかに重苦しい空気が漏れてくる。

「スネイプはもう、フラッフィーを突破したんだ」ハリーが声を殺して言った。

扉の隙間から暗がりをのぞきこむと、4人は自分たちがこれからやろうとしていることの重大さを、あらためて思い知らされた。
マントの中で、ハリーはそっとこちらを振り返った。


「君たち、引き返したいなら今のうちだ。マントも持って行っていい。僕にはもう必要がないから」

ロンが肩をすくめて言った。「バカ言うな」

「一緒に行くわ」とハーマイオニーも、迷いのない声で言った。

その横で、チユは苦笑いを浮かべた。
「…ここで逃げたら、女が廃るってやつじゃない?」


軽く冗談めかして言ったけれど、声にはどこか覚悟が滲んでいた。


ハリーは短くうなずき、扉に手をかけた。

鈍くきしむ音を立てて、扉がゆっくりと開いた。
その瞬間、低く、地の底から響くような唸り声が耳を打つ。3つの巨大な鼻が、姿の見えない4人のいる方向へと空気を嗅ぎまわっていた。


「犬の足元にあるのは何かしら?」とハーマイオニーが囁いた。

ロンが目を細めて答えた。「ハープみたいだ。スネイプが使ったに違いない」

「きっと音楽が止んだ瞬間、目を覚ますんだ」とハリーが言った。

チユが小さく息をのんだ。「じゃあ、さっさとやるしかないね」

「始めよう」ハリーはハグリッドにもらった横笛を取り出し、そっと唇にあてた。

その音色は、決して美しいとは言えなかった。けれど、最初の一音が空気に響いた瞬間、フラッフィーの3つの頭がぴたりと動きを止めた。
ハリーは息も継がずに吹き続ける。次第に唸り声が消え、犬の巨体がぐらりと揺れたかと思うと、その場にどさりと倒れ込み、やがて深い眠りに落ちた。

4人はマントの下から音もなく抜け出し、そっとフラッフィーの足元に近づいた。その巨大な頭のすぐそばを通り抜けようとするとき、熱い鼻息がふっと肌をなでた。

チユは思わず息を止めた。

「……っ、この匂い。テシーおばさん家の押し入れの奥みたい…」
ロンがそう呟いて、小さく鼻をすすった


「確かに凄い匂い……まあ、寝てくれて助かったよ。お利口さんだね、フラッフィー」

チユが小さくそう言うと、軽く頭を下げるようにしながら、そっと足を進めた。
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