第16章 仕掛けられた罠
ハーマイオニーが一歩進み出た。
「ネビル、本当に、ごめんなさい…」
彼女は震える手で杖を握りしめた。ネビルの優しい顔が不安げに揺れる。ハーマイオニーはためらったが、意を決して杖を振り上げた。
「ペトリフィカス・トタルス!」
青白い閃光が走り、ネビルの体がピンと硬直した。両腕は体の脇にぴったり張り付き、両足も揃ってしまう。彼はまるで板のように硬直し、その場でぐらりと揺れると、ついにうつ伏せに倒れ込んだ。
「うわぁ……」
チユが思わず息を呑んだ。固まったネビルを見下ろし、目をパチクリさせる。
ハーマイオニーはすぐに駆け寄り、ネビルを仰向けに戻した。ネビルの目だけが動き、驚きと恐怖が浮かんでいる。
「ネビルに何をしたんだい?」ハリーが小声で尋ねた。
「『全身金縛り』の呪文をかけたの……ごめんなさい、ネビル」
ハーマイオニーは辛そうに言い、眉をひそめた。
「ネビル、こうするしかなかったんだ。説明してる時間がないけど……」ハリーが申し訳なさそうに言う。
「あとできっとわかるよ、ネビル」ロンも気まずそうに言った。
3人はネビルをまたぎ、透明マントをかぶった。チユもそれに続いたが、ちらりとネビルを振り返る。床に横たわる彼の姿に、なんとも言えない気持ちになった。
(やっぱり……ちょっとかわいそうかも)
けれど、もう戻るわけにはいかない。4人は慎重に歩き出した。
神経が張り詰めているせいで、銅像の影がフィルチに見えたり、遠くの風の音までピーブズの笑い声のように思えたりした。
最初の階段の下まで来ると、ミセス・ノリスが階段の上を忍び歩いているのが見えた。
「ねぇ、蹴っ飛ばしてやろうよ」ロンがハリーの耳元でささやく。
「ダメだよ」ハリーは即座に首を振った。
「そもそも、そんな事してどうするのよ」ハーマイオニーが冷ややかにささやく。
「いや、でもさ…」
「やめときなって、ロン」チユが小さく笑いながら言う。「今やったら、確実にフィルチに捕まるよ」
慎重に彼女を避けて階段を上る。ミセス・ノリスはランプのような目でじっと4人を見たが、それ以上の反応はなかった。
4階に続く階段の下にたどり着くまで、幸運にも誰にも出会わなかった。
チユは少し息を詰めながら、透明マントの下で手をぎゅっと握りしめた。