第16章 仕掛けられた罠
ハリーは咄嗟に透明マントを背後に隠した。
「また外に出るんだろ?」
ネビルは4人の後ろめたそうな顔をじっと見つめていた。
「ううん、違うわよ。出てなんかいかないわ」
ハーマイオニーが優しく言いながら、そっとネビルに歩み寄る。しかし、その表情は強張っていた。
「ネビル、もう寝たら?」
けれど、ネビルは動こうとしなかった。
この瞬間にもスネイプがフラッフィーを眠らせ、先へ進んでいるかもしれない。
「ダメだ、また見つかったら、グリフィンドールはもっと大変なことになる」
ネビルは声を震わせながらも、必死に言った。その小さな体には、彼なりの精一杯の決意が込められていた。
「君にはわからないことだけど、これは、とっても重要なことなんだ」
ハリーが説得しようとするが、ネビルは頑なだった。
「行かせるもんか!」
そう叫ぶと、ネビルは出口の肖像画の前へと駆け寄り、両腕を広げて立ちはだかった。
「僕、僕、君たちと戦う!」
チユは驚いてネビルを見た。まさか、ネビルがここまで強情に食い下がるとは思わなかった。
「そこをどけよ。バカはよせ!」
ロンが苛立ったように声を荒げる。
「バカ呼ばわりするな!」
ネビルは顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「もうこれ以上、規則を破っちゃいけないんだ!恐れずに立ち向かえって言ったのは君たちじゃないか!」
「そうだよ。でも、立ち向かう相手は僕たちじゃない!」
ロンがネビルを睨みつける。
「ネビル、君は自分が何をしようとしてるのかわかってないんだ!」
「やるならやってみろ!」
拳を振り上げながら、ネビルが叫ぶ。
「殴れよ!いつでもかかってこい!」
チユは思わず息を飲んだ。
「ネビル……本気で言ってるの?」
いつもの気弱なネビルの姿はそこにはなかった。震えながらも、それでも彼は立ち向かおうとしていた。
「ネビル。私、あなたがこんなに勇敢だなんて知らなかった」
ネビルはぎゅっと唇を噛みしめたが、引く様子はない。
チユはほんの少しだけ、そんな彼を誇らしく思った。だけど――
「でもね、今は退いてほしいんだ」
ハリーは困り果てたようにハーマイオニーを振り返る。
「……頼む」
その視線には、言葉以上のものが込められていた。
ハーマイオニーは一瞬ためらったが――やがて、意を決したように杖を握りしめた。
