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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第16章 仕掛けられた罠



夕食のあと、談話室の片隅で4人は落ち着かない様子で座っていた。他のグリフィンドール生たちからはすっかり距離を置かれ、誰も彼らに話しかけようとしなかった。

もっとも、今夜ばかりはそれが都合よかった。ハーマイオニーは机に広げた本を熱心にめくりながら、これから突破しなければならない呪いのことを考えていた。ハリーとロンは言葉少なに、これからの計画を頭の中で整理しているようだった。

一方、チユは足を揺らしながら、ちらちらと周囲を窺っていた。沈黙が妙に重く感じられ、無意識に指先をこすり合わせる。こういう緊張感のある空気は苦手だった。何か気の利いた冗談のひとつでも言いたかったが、さすがに今は場違いな気がしてやめておいた。


「ねえ、」とチユはぽつりと呟いた。「こういうときって、何かこう……気分を落ち着ける方法ないの?」

ロンがちらりとチユを見る。「君がそんなこと言うなんて珍しいな」

「いや、別に怖がってるわけじゃないけどさ。ただ、こう……じっとしてると余計に落ち着かないっていうか……」

「わかる気がする」とハリーが小さく笑った。「でも、今は考えるしかないよ」


チユは口をつぐみ、結局深いため息をついた。
どうにも、じっと待つのは性に合わない。


やがて寮生たちが1人、また1人と談話室を去っていき、部屋は次第に静かになっていった。暖炉の火が小さく揺れ、時折パチっと薪の爆ぜる音が響く。


「マントを取ってきたら?」

ロンが小声で囁く。

ハリーは頷き、素早く立ち上がると、階段を駆け上がっていった。数分もしないうちに、透明マントをしっかりと抱えて戻ってくる。


「ここで試してみよう。4人全員がちゃんと隠れるかどうか確認したほうがいい。もし足が1本でもはみ出してたら、それこそフィルチのいい獲物だ」

「はみ出したまま歩き回るのは、ちょっと間抜けすぎるしね」
チユが小さく笑ったが、誰もが真剣だった。


そのとき――


「君たち、何してるの?」

不意に声がして、4人はびくりと肩を跳ねさせた。

振り向くと、部屋の隅のひじ掛け椅子の陰から、ネビルが顔を出していた。腕には逃げ出そうともがくヒキガエルのトレバーをしっかりと抱えている。その表情は不安そうで、けれどどこか決意を秘めたようにも見えた。

「どうする?」

ハリーは一瞬迷ったが、すぐにネビルへと向き直った。
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