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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第16章 仕掛けられた罠



4人は黙って玄関ホールに向かい、その途中で互いに一言も口をきかなかった。ホールに入ると、校庭の明るさと比べて、そこはどこか冷たく、陰気な空気が漂っているように感じられた。


「ダンブルドアのところに行かなくちゃ」


ハリーが低い声で言った。彼の目は真剣だ。


「ハグリッドが怪しいやつに、フラッフィーをどうやって手なずけるか教えてしまった。マントの人物はスネイプか、ヴォルデモートだったんだ……。ハグリッドを酔っ払わせてしまえば、あとは簡単だったにちがいない。」


「酔ってなくたってあんなに簡単に聞き出せちゃうんだもん、あとはダンブルドアが私たちの言うことを信じてくれればいいけど……」チユの声は少し震えていた。


「フィレンツェが証言してくれるかもしれない。校長室はどこだろう?」
ハリーが言い、皆があたりを見回した。

「こうなったら、僕たちとしては―」
ハリーが言いかけたとき、突然、ホールのむこうから声が響いてきた。


「こんな所で何をしているのですか?」


山のような本を抱えたマクゴナガル先生だった。


「ダンブルドア先生にお目にかかりたいんです」
ハーマイオニーが勇敢にもそう言った。


「理由は?」マクゴナガル先生が疑わしげに言った。


すぐに心がざわついた。何か言わなきゃいけない、でもどう言えばいいのか――そんな思いで胸がいっぱいだった。


その瞬間、ハリーが言った。


「秘密なんです」


その言葉に、マクゴナガル先生の鼻の穴がふくらみ、その表情が一層険しくなるのが見えた。彼女は何かを察したのだろうか。


「ダンブルドア先生は10分前にお出かけになりました」
マクゴナガル先生が冷たく言った。


その言葉を聞いた瞬間、チユの心臓が止まるかと思った。


「魔法省から緊急のふくろう便が来て、すぐにロンドンに飛び発たれました。」

「先生がいらっしゃらない?この肝心な時に?」
ハリーが問い詰めるように言った。だが、その声には絶望に近いものが込められていた。

今、まさにダンブルドアの助けが必要だというのに、居ないなんて……。

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