第16章 仕掛けられた罠
「ダンプルドア先生は大変ご多忙でいらっしゃる」
ハリーは慎重さをかなぐり捨てて言った。
「先生『賢者の石』の件なんです……」
その言葉を聞いた瞬間、マクゴナガル先生は一瞬驚きの表情を浮かべ、手に持っていた本がバラバラと床に落ちた。
「どうしてそれを…?」先生はしどろもどろだ。
「先生、僕は知ってるんです。スネイ……いや、誰かが『石』を盗もうとしています。どうしてもダンブルドア先生にお話ししなくてはならないんです」
マクゴナガル先生は驚きと疑いの入りまじった目をハリーに向けていたが、しばらくして、やっと口を開いた。
「ダンブルドア先生は、明日お帰りになります。あなたたちがどうしてあの『石』のことを知ったのかわかりませんが、安心なさい。誰も盗む事は出来ません」
「でも先生…」
ハリーがさらに言おうとしたが、先生はその言葉を遮るように、強い口調で言った。
「2度同じことは言いません、外に行きなさい。せっかくのよい天気ですよ」先生はかがんで本を拾いはじめた。
4人ともその場を動かなかった。
「今夜だ」
マクゴナガル先生が声の届かない所まで行ってしまうのを待って、ハリーが言った。
「スネイプが仕掛け扉を破るなら今夜だ。必要なことは全部わかったし、ダンブルドアも追い払った。スネイプが手紙を送ったんだ。ダンプルドア先生が顔を出したら、きっと魔法省じゃキョトンとするにちがいない」
チユはその言葉を聞きながら、頭の中で必死に次の一手を考えていた。
「でも私たちに何ができるっていうの」ハーマイオニーが呟く。
「盗まれる前に、私たちで盗っちゃうってのは?」
チユが無茶苦茶な提案をした瞬間、ハーマイオニーは思わず首を振った。
「それは無理よ」
ハーマイオニーの表情は真剣だ。彼女もまた、状況の重さを感じ取っていた。しかし、チユが言ったことで一瞬でも気が楽になったのも事実だった。
「フラッフィーを眠らせられたとして、他の罠はどうする気?」
ハーマイオニーが厳しく続けると、チユは黙り込んだ。
「よし、こうしよう」
ロンが声を上げた。
「スネイプを見張るんだ。職員室の外で待って、スネイプが出てきたら、後をつける。ハーマイオニー、君がやってくれ」
ハーマイオニーは、最初は何か言いたげに口を開けたが、結局、彼女が見張ることになった
