第16章 仕掛けられた罠
「おーい、姫!こっちこっち!」
フレッドが顔を上げ、ニヤリと笑って手招きした。
「君も参加しないか?我々が開催する『巨大生物くすぐりダービー』の第1回大会だ!勝者には名誉と栄光が!」
「足の裏が1番効くぜ!」ジョージが得意げに言いながら、大イカの足をツンツンとくすぐる。
すると、大イカがぴくりと動き、水がはねた。
「うわっ!」
フレッドが派手にジャンプして飛びのき、ジョージは大笑いする。
「スコア10点!見事な跳躍だ、フレディボーイ!」
チユは呆れたように眉をひそめた。
「……そんなことして、怒られないの?」
「大丈夫、大丈夫!」ジョージが軽く手を振った。「こいつ、実は結構楽しんでるんだぜ?」
その言葉の直後、大イカが大きく動き、水が派手に弾けた。
「うわああっ!これは予想外の反撃だ!」
「撤退!撤退!敵の逆襲だ!」
ジョージが笑いながら応じ、とっさにチユの前に立ちはだかったおかげで彼女は濡れずに済んだ。
ずぶ濡れになったフレッドとジョージは、互いに叫びながらも笑いが止まらない様子で、リー・ジョーダンは「大イカの勝ち!大イカの勝ち!」と実況しながら逃げ出した。
「……あれ、楽しんでるのかな?」
チユは首をかしげる。
「多分……?」
ハリーが苦笑しながら言った。
ハーマイオニーは「バカみたい、楽しんでるのはあの3人だけよ」と呆れたように言った。
試験が終わった開放感と、初夏の陽気。
一瞬だけ、森のことも、賢者の石のことも忘れられるような、穏やかな時間が流れていた——。