第15章 森への足音
フィレンツェの言葉を聞きながら、チユは背筋に冷たいものが走るのを感じた。そしてハリーは、まるで答えを悟ったかのように、震える声で呟いた。
「ヴォルデモート……?」
「その名を口にするな!」
ハグリッドが低く、強い口調で叱りつけた。
ハリーは口をつぐんだが、その顔にはまだ恐怖と疑念が残っている。
「ヴォルデモートが生きてるなんて……」チユは無意識に呟いた。しかし、言葉にした途端、背筋が寒くなった。まるでその名前を口にすることで、彼がこの森のどこかで耳を澄ませているのではないかという錯覚さえ覚えた。
「この話はここまでだ」ハグリッドが言った。「今はとにかく、城へ戻るぞ」
ハグリッドの言葉に、皆はようやく現実に引き戻された。彼らはケンタウルスたちに礼を言い、森を後にした。
「気をつけるんだ、人間の子供たち」
フィレンツェは静かにそう言うと、仲間たちと共に再び森の奥へと消えていった。
ハグリッドの後に続き、チユたちは森を抜ける道を急いだ。誰も口を開こうとしない。森の闇が一層深く感じられた。
「さっきの話……やっぱり、あいつだったのかな……?」
沈黙に耐えきれず、ハリーがぽつりと呟くと、ハーマイオニーが肩を震わせた。
「そんなはず無いわよ…」
「けど、フィレンツェの話あれがもし本当なら……」
ハリーはなおも何か考え込んでいるようだった。だが、彼の目に宿る光は恐れだけではない。疑問、決意、そして——怒りのようなものも感じられた。
「……まさか、スネイプが関わってる?」
突然ハリーがそう言った。
「えっ?」
チユは驚いてハリーを見た。
確かに、賢者の石を狙っているのはスネイプだと思っていたけれど、もしその背後にヴォルデモートがいるとしたら——?
「関係あるのかもしれない…」
チユの声がかすかに震えた。
「おしゃべりはそこまでだ!」
ハグリッドが振り向いて、ぴしゃりと言った。「とにかく、今夜はもう終わりだ! お前たちはこの件に首を突っ込むんじゃない。いいな?」
ハリーは何か言いたげだったが、ハグリッドの厳しい表情に押され、黙るしかなかった。