第15章 森への足音
「見つからないね」ネビルが不安そうに呟いた。
随分と森の奥を進んでいるが、ユニコーンの姿はどこにも見当たらない。
それどころか、頼りにしていた血の跡も次第に薄くなり、道しるべとしての役割を果たせなくなりつつあった。
「1度、ハグリッドたちと合流しよう」
チユが提案すると、ネビルとマルフォイも小さく頷いた。森の奥に進みすぎるのは危険だし、道を誤れば戻れなくなるかもしれない。
「えっと……困った時は……赤、だっけ?」
自信なさげに呟きながら、チユは杖を掲げ、赤い光を夜空へと打ち上げた。魔法の閃光が木々の間をすり抜け、高く昇ってからゆっくりと消えていく。
しばらくすると、遠くから地響きのような音が聞こえてきた。
ドスン、ドスン……
「おーい、お前さんたち、どうした?」
暗闇の中から現れたのは、やはりハグリッドだった。大きなランタンを手にし、心配そうにこちらを見下ろしている。
「血の跡がどんどん薄くなってるんだ」とチユが報告する。「もしかしたら、傷が癒えて元気になったのかもしれない……」
と言ったものの、重傷を負っていたはずのユニコーンが、そう簡単に回復するとは思えない。それでも、そうであってほしい——そんな淡い期待が、チユの胸の中に広がっていた。
ハグリッドは眉をひそめ、しばらく考え込んでいたが、やがて「そうだとええんだがな……」と低く呟いた。
「ともかくハリーたちと合流しよう、着いて来い」
ハグリッドの大きな足音を頼りに、チユたちは森の奥へと進んでいった。
湿った土の匂いが鼻をつき、木々の間から差し込む月明かりだけがかろうじて道を照らしている。
やがて、森の奥から別の足音が聞こえてきた。
「ハリー!ハーマイオニー!」
チユが声を上げると、そこにはハリーとハーマイオニーの姿があった。2人は明らかに緊張した様子で、ハリーは杖を握りしめている。
「お前たち、大丈夫か?」
ハグリッドが近づくと、ハリーは明らかに怯えた様子で震えていた。
「そっちに……何か、いたのよ……!」
ハーマイオニーの顔は青ざめ、ハリーも硬い表情のまま頷いた。
「何かって、何を見たんだ?」
ハグリッドが尋ねると、ハリーは少し言葉を詰まらせてから答えた。
「……ユニコーンが死んでいたんだ。誰かがその血を飲んでいた……」