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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第2章 ダイアゴン横丁



家へ帰ると、染み付いた木の香りと埃っぽい空気が2人を出迎えた。


リーマスは上着を脱ぐ間も惜しむように台所へ向かい、馴れた手つきで紅茶を淹れ、「さっき買ってきたんだ」と言ってケーキを出してくれた。


チユが優しく温もる紅茶に口をつけ、ケーキをつついていると、リーマスは綺麗な紙にラッピングされた包みを渡してきた。

淡い青の包装紙に白いリボンが添えられ、明らかに店で丁寧に包装してもらったものだった。


「これ、君に似合うと思って。正装は1着は必要だろうから…気に入らなかったらすまない」
彼の声には珍しく緊張が混じっていた。


包みを解くと、そこには上品な黒のワンピースが現れた。

襟元には控えめな刺繍が施され、胸元の赤いブローチが瞳のように輝いていた。裾のレースは繊細な模様を描き、触れるのが憚られるほどの優美さだった。


チユの胸が熱くなった。思わず感極まり、チユはリーマスに抱きついた。


「ありがとう、嬉しい!」


その言葉を聞いて、リーマスの肩から緊張が解けていくのが分かった。

部屋を見渡せば、所々剥げかかった壁紙や、何度も繕われた家具が目に入る。彼が決して裕福でないことは明らかだった。


だからこそ、この贈り物の重みが胸に染みた。



「良かった、君の好みに合わなかったらどうしようかと思って不安だったんだ」


自信がないのは先程、洋服店で地味で質素なものばかり選んでいたからだろう。
しかし、リーマスがプレゼントしてくれたワンピースは、確かに派手目ではあったが、チユの好みにぴったりだった。


「着てみてもいい?」チユが期待に目を輝かせると、リーマスは優しく頷いた。

寝室で着替えたチユは、少し恥ずかしそうに部屋に戻ってきた。


「どうかな?」


その姿を見たリーマスの顔が、まるで太陽のように輝いた。


「思った通りよく似合っているよ!お姫様みたいだ」


その言葉に、チユは得意気にくるりと回った。黒いスカートが優雅に舞い、レースが光を散りばめる。


「本当にありがとう、リーマス!」


夕暮れの柔らかな光が窓から差し込み、2人の幸せな瞬間を優しく包み込んでいった。


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