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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第2章 ダイアゴン横丁




「次は教科書を揃えにいこう、私が用意しても良かったんだが君も見たいかなと思って」


リーマスとはまだ短い時間しか過ごしていないが彼はこの世界で1番自分の事をよく理解しているんじゃないかとチユは思った。


それ程、リーマスの提案は彼女にとって嬉しいものだった。


それから『フローリシュ・アンド・ブロッツ書店』と書かれた店に入るとチユは感動して思わず声をあげた。

棚には天井まで本がぎっしりと積み上げられている。
チユは、教科書を揃えなければいけないことをすっかり忘れて、夢中になって本棚の間をうろうろと歩き回る。リーマスはそんなチユの姿を見て、少し呆れたように笑いながら、店主に教科書のリストを見せた。



「教科書は揃えられたよ、他に何か欲しい物はある?」



チユが本に夢中になっている間に、リーマスはいつの間にか必要な本を揃えていた。チユはたまたま目の前にあった『呪いのかけ方、解き方』という本を手に取り、興味津々で言った。「これが欲しい。」


「誰かに使おうとしているのかい?」


「必要なら」


チユがそう答えると、リーマスは黙って何かを考えていた。その後、少しの間の沈黙を破って、リーマスは静かに言った。


「わかった、でもこの本はやめておこう。これは教科書には指定されていないけど、きっと君の役に経つだろうから私からプレゼントするよ」


そう言って渡されたのは『The Esential Defences Against Dark Arts(闇の魔術に対する防衛術)』
と書かれた本だった。


その後、店を出ると、リーマスは言った。「さあ、次は杖を買いに行こう」

チユは少し躊躇いながらも、ポケットから1本の杖を取り出した。「いいえ、これがあるから…」


だが、それは杖と言うにはあまりにも粗末な出来だった。

自分で加工した為、木の表面は擦り減っていて、曲がりくねり、先端も欠けている。何故機能するのか不思議な程だ。

けれど愛着がある為にそれを手放せない。
リーマスはそれを悟ったのか何も言わなかった。


「じゃあ、お茶でもしてから帰るかい?」リーマスは穏やかな声で提案し、チユを気遣うように見守った。


チユは少し考えてから、優しく首を横に振った。


「お茶は帰ってからにしようか」



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