第15章 森への足音
試験を1週間後に控えたある日。
図書館の中は、静まり返っていた。
ホグワーツの生徒たちは皆、試験勉強に追われ、必死で教科書にかじりついていた。
ハーマイオニーは噂を気にしないようにしているのか、普段にも増して凄まじい集中力で試験勉強に没頭していた。
ロンはそんな彼女に半ば呆れつつも、一緒に勉強を続けていた。
チユもノートを開いてはいたが、机に突っ伏し、軽く居眠りをしていたところだった。
そこへハリーが焦った様子で駆け込んできた。
チユはびくっと飛び起き、寝ぼけ眼のままハリーを見上げる。
「な、なに? もう試験始まった?」
「違うよ!」ハリーは息を切らせながら言った。「クィレルがとうとう、スネイプに闇の魔術に対する防衛術を突破する方法を教えたんだ!」
ロンが驚いて本を落とし、ハーマイオニーは顔をこわばらせた。
「でもまだフラッフィーがいるわ」
「……スネイプは、ハグリッドに聞かなくてもフラッフィーを突破する方法を見つけたかもしれないな」
ロンが周囲にそびえ立つ何千冊もの本を見上げながら言った。
「これだけありゃ、どこかに3頭犬を突破する方法だって書いてあるよ」
ロンの目には、また冒険心が燃え上がっていた。しかし、ハリーよりもすばやく、ハーマイオニーが口を開いた。
「ダンブルドアの所へ行きましょう、ずっと前からそうしなくちゃいけなかったんだわ!」
「だけど、僕たちには証拠がないよ。スネイプは、トロールがどうやって入ってきたのか知らないって言い張るだろうし、あの時4階になんて行かなかったってスネイプが言えば——みんな、どっちの言うことを信じると思う?」
それは、あまりにも明白だった。
スネイプは教師で、自分達は問題ばかり起こす1年生だ。
ハーマイオニーは言葉を詰まらせた。
チユも、眉をひそめながら呟く。
「確かに……それに、私たちがスネイプを嫌ってるのはみんな知ってるし……。スネイプをクビにするために、適当な作り話をしてるって思われるかもね」
ハリーは悔しそうに唇を噛んだ。
「……ちょっとだけ探りを入れてみたらどうかな?」
チユが提案すると、ハリーはきっぱりと言った。
「ダメだ。僕たち、もう充分、探りを入れすぎてる」
ハリーはそう答え、木星の星図を引き寄せ、木星の月の名前を覚えはじめた。