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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第15章 森への足音



翌日、寮の得点を記録する大きな砂時計の前で、グリフィンドールの生徒たちは誰もが目を疑った。

「……これ、掲示ミスじゃない?」


ざわめきが広がる。

そして、徐々に噂が学校中に広まり始めた。

『ハリー・ポッターとチユ・クローバー、そして何人かのバカな1年生が、寮の点数を丸ごと吹き飛ばしたらしい』


昨日まで人気者で、称賛の的だったハリーは、1晩にして1番の嫌われ者になっていた。
レイブンクローやハッフルパフの生徒すら冷たい目を向けてくる。

そして、スリザリン生はハリーが通るたび、皮肉たっぷりに口笛を吹きながら言った。


「ポッター、ありがとな! 借りができたぜ!」


笑い声が背中に突き刺さる。

チユも似たような扱いを受けたが、彼女は元々スリザリンの生徒からはよく思われていなかったし、異色の目のせいで昔から色々言われることには慣れていた。
だから、それほど気にしていなかった。

……とはいえ、気味悪がられるのはやっぱり少し傷つくけど。


それよりもハリーが心配だった。

彼は皆から期待され、憧れられていたのに、今やそのすべてが裏返り、孤立してしまったのだ。


「フレッドやジョージなんか、ホグワーツに入ってからずっと点を引かれっぱなしさ。それでも皆に好かれてるよ」

「だけど、一度に200点も引かれたりはしなかっただろ?」ハリーが苦い顔で言った。

「それは……まあ、そうだけど……」ロンも認めざるを得なかった。


ハリーは、じっとテーブルの木目を見つめている。
顔を上げれば、皆の視線が突き刺さるのがわかっていた。


「どうせ時間が経てば、みんな別の話題に夢中になるよ。たとえば——ほら、スネイプが実はヴァンパイアだったとか?」


チユが気楽な調子で肩をすくめてみせると、ロンが吹き出し、ハリーもふっとわずかに口元を緩めた。

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