第14章 ドラゴンの子、ノーバート
3人は笑い合いながら到着を待っていた。
やがて、チャーリーとその友人たちが現れた。
チユは思わずまじまじと彼を見つめた。
日に焼けた肌に無造作な短髪、屈託のない笑顔。それに、動きやすい革のジャケットと手袋をつけていて、どことなくワイルドな雰囲気がある。
「なかなか元気そうだ」
チャーリーがノーバートの入った箱を見て言った。
「それはもう。さっきなんて、ぬいぐるみを引き裂いてたし……」 チユが肩をすくめる。
「それくらいなら可愛いもんさ。俺の知ってるドラゴンなんて、鉄を噛み砕くぞ」 チャーリーが笑った。
チユはゾッとしてハリーと顔を見合わせたが、チャーリーはどこ吹く風で箱を軽く叩く。
「それにしても、こいつを運ぶのに苦労しただろ?大丈夫だったか?」
「途中で見つかりそうになったけど、なんとか」
ハリーが苦笑する。
「はは、それはスリル満点だな。いい経験になっただろ?」
「こんな経験、2度としたくないけどね」
チユがジト目で答えると、チャーリーはますます楽しそうに笑った。
「でも、無事にここまで連れてきてくれて助かったよ。あとは俺たちに任せてくれ」
「頼んだよ」 ハリーがチャーリーと握手を交わし、ノーバートを託す。
ついにノーバートは空へ飛び立ち、やがて見えなくなった。肩の荷も心の荷もすっかり軽くなった3人は、満足感に浸りながら螺旋階段を下りていった。
こんな幸せに水を差すものがあるだろうか?
……その答えは、階段の下で待っていた。
廊下に足を踏み入れた瞬間、暗闇からフィルチの顔がスッと現れる。
「さて、さて、さて……」
フィルチが不気味にささやいた。
「困ったことになりましたねぇ」
その瞬間、3人の顔から笑顔が消えた。
――透明マントを塔のてっぺんに忘れてきてしまっていた。