第14章 ドラゴンの子、ノーバート
そしてついに、ハグリッドがノーバートに別れを告げる時が来た。
チユたちは自分たちのことで精一杯で、ハグリッドを気の毒に思う余裕はなかった。小屋に着くと、ハグリッドはノーバートを大きな木箱に入れて準備を済ませていた。
「寂しいといけないから、テディベアのぬいぐるみも入れてやった」
箱の中からバリバリと何かを引き裂く音がした。
それは、ぬいぐるみの頭が引きちぎられる音に聞こえた。
「ずいぶんと激しい子…」 チユがぼそっとつぶやく。
「ノーバート、バイバイだよ!」
ハグリッドのすすり泣く声を背に、3人は透明マントをかぶって塔へと向かった。
夜の廊下を慎重に進む。途中で誰かに見つかれば計画は水の泡だ。だが、突如、人影が現れた。
暗がりの中、マクゴナガル先生がマルフォイの耳をつかんでいる。
「罰則です! さらに、スリザリンから20点減点! こんな真夜中にうろつくなんて!」
「先生、誤解です! もうすぐポッターがドラゴンを連れて……!」
「くだらないことを! ついていらっしゃい!」
計画を邪魔するつもりだったんだろう。だが、罰則を受けるのはマルフォイのほうだ。チユは心の中でほくそ笑んだ。
残りの道のりは、まるで羽が生えたように軽かった。
夜の冷たい風を浴びながら塔の上にたどり着くと、3人は透明マントを脱いだ。
「マルフォイが罰則を受けた! 歌でも歌いたい気分よ!」 ハーマイオニーがはしゃぐ。
「じゃあ私は踊ろうかな!」 チユも満面の笑みを浮かべ、くるりと回ってみせた。
「どっちもやらないでね」ハリーが苦笑しながら忠告した。