第2章 ダイアゴン横丁
「はい、お嬢さん、終わりましたよ!」
「どうも、マダム。」
チユが軽く一礼すると、マダム・マルキンはにっこりと微笑んだ。
採寸中、何度も様々な言葉でチユを褒めてくれたが、チユはその度に聞こえないふりをしていた。
「あの、普段着を何着か欲しいんですけど…」
「じゃあ、ちょっと待っててね。あなたなら何でも似合うわよ」と、マダム・マルキンは目を輝かせながら店の奥に向かっていった。
チユが深いため息をついていると、店の扉が開き、たくさんの重そうな荷物を抱えたリーマスが入ってきた。
「やあ、採寸は終わったかい?」
「うん、今、普段着を持ってきてもらってるところ」
「そうか、こっちはあらかた買い揃えられたよ」
リーマスはふうと息をついて椅子に腰掛けた。
彼にこの大荷物を1人で運ばせたことに対して少し申し訳ない気持ちになった。
悪いが、彼はとても身体が丈夫そうには見えなかった。
「さあ、持ってきましたよ。見てみて頂戴」
マダム・マルキンが両手いっぱいの洋服を抱えて戻ってきた。
チユとリーマスは思わず苦笑いを浮かべた。
持ってきた服を広げてみると、フリルがたっぷりついたブラウスや、お姫様のようなワンピースなど、どれも普段着としてはあまりにも派手で、とても着られそうにないものばかりだった。
その中で、チユはなるべく暗くてシックなワンピースを選び、「これにします」と告げた。
マダム・マルキンは少し残念そうな表情を浮かべたが、気付かないふりをして会計を済ませ、店を出た。