第12章 初めてのクリスマス
ジェームズとリリー、ピーターの死、そしてシリウスの裏切りはリーマスの生涯において最も深い傷を残した。
あの出来事から生まれた孤独と絶望は、彼を長い間苦しめ続けた。
汚れた路地にひっそりと立つ朽ちかけた廃墟のような家に住み、彼は自身の能力に見合わない単調で無意味な仕事をこなしていた。
毎日が無力感に満ち、心は鬱屈し、次第に自分を見失いそうな日々が続いていた。
そんな日々を変えたのはチユだった。同じように孤独と傷を抱えていた彼女こそが、リーマスにとっての希望となった。
彼女の存在は、長い暗闇の中に差し込む一筋の光のようで、リーマスに新たな生きる力を与えてくれた。
彼の目の前には、深い眠りについているチユが静かに寝息を立てている。
彼女の顔に浮かぶ穏やかな表情、無防備に眠っているその姿が、リーマスの胸に温かさをもたらしていた。
「君は本当に、強いんだな…」リーマスは心の中でつぶやいた。
彼女には、確かに深い傷があったことを知っている。
それでも、彼女は前を向いて歩き続け少しずつ自分を取り戻していったのだ。
その強さに、リーマスは尊敬の念を抱くと同時に、切なさが胸に込み上げた。
リーマスは立ち上がり、静かにチユの横に歩み寄った。
彼女が寝ている間に、冷えた布団を優しく整え、少しずつ彼女の体を温めるように毛布を引き寄せた。
何があってもチユを守ろう――彼は心の中で誓った。
あの孤独な日々、1人で背負っていた全てのものを彼女に感じさせないようにしたい。
そして、もし泣きたい時、苦しい時があれば、必ず彼女のそばにいると決めていた。
もう、彼の心に孤独は残っていなかった。
静かな夜の中で、彼はチユが幸せでいられるよう、心の底から祈りながら、その夜を過ごした。