第12章 初めてのクリスマス
「一体なんだったんだろう?なんか出発前に疲れちゃったよ…」
「なんで、マルフォイがあなたをパーティに誘ったのかしらね」ハーマイオニーが疑問そうに言った。
その時、ゼロが馬車に乗り込んできた。
「えっと…ごめん、空いてるかな?」ゼロは少し気まずそうに声をかけた。
チユは微笑みながら「もちろん!」と答える。
「知ってると思うけど、彼はゼロだよ。こちらはハーマイオニー」チユは2人を紹介した。
ゼロとハーマイオニーは少し気まずそうに会釈を交わす。
「ところで、聞いたんだけど、マルフォイ家のパーティに行くの?」ゼロが話を切り出した。
「いいえ、誘われたけど、パーティなんて行ったことないし…」チユは肩をすくめながら答えた。
「そうか、残念だ。君がいれば、きっと楽しいと思ったんだけど」ゼロは少し惜しむように言った。
「あなたも行くの?」ハーマイオニーが尋ねる。
「ああ、親同士の交流があって、ドラコとは幼馴染なんだ」
マルフォイ家もグレイン家も、イギリスの裕福な純血一族だ。両家の交流があっても不思議ではないが、穏やかで優しいゼロと、あの気難しいマルフォイが一緒にいる姿は想像できなかった。
ゼロは続けて言った「まあ、肩肘張った場所だし、行っても楽しくないかも。俺も出来れば行きたくないよ」彼は少し苦笑し、肩をすくめた。
「そうなんだ…そんな家柄の良い人たちが集まる場所に行っても、きっと場違いだよね」チユは顔を曇らせながら言った。
「そんな私を笑いたくて誘ったのかも」
ゼロは首を横に振り、真剣な表情で言った。
「それは違うと思うよ。確かにドラコは素直じゃないけれど、君を純粋に誘いたかったんだと思う」
チユは驚いたようにゼロを見つめた。思わず眉をひそめ、軽く首をかしげる。「なんで?」
ゼロは顔を赤らめ、視線を少し外しながら続けた。
「なんでって…だって、君すごく綺麗じゃないか。」
チユは一瞬、その言葉に戸惑い、何か言おうとしたが、照れくささに思わず笑みが漏れた。
胸が高鳴り、彼女は心の中で思った。マルフォイがそんな理由で自分を誘ったとは思えないけれど…ゼロの言葉には、何か本当に心がこもっている気がする。
ドキドキする胸の鼓動が止まらないことを、自覚していた。